架空・お悩み相談室87『近頃の若い男性の草食系について』
【お悩み】
阿藤先生、聞いてください~
近頃の若い男性の草食系について、どんな風にお感じですか
うちは、配偶者の親の代からお店を経営していて、肉体労働を厭わないアルバイトの男子学生を雇っているんですね。
必要なのは明るくハキハキと礼儀正しい挨拶のできる青年なんです。
ところが、最近の大学生はめちゃくちゃ声が小さいんです。いらっしゃいませを蚊の鳴くように囁かれてもお客様には聞こえません。
ありがとうございますって大きな声で言わなくては、また この店で買い物しようと思ってもらえないよって口をすっぱくして教えても、そーすか と張り合いのない反応。
たまに、晩御飯をご馳走するんですが、そんなときだけ、あざーす と元気に言われても、おばちゃんは情けない
このような若者に腹の底から気持ちのこもった発声をさせる方法はないでしょうか(神奈川県/こぶとりおばちゃんさんのお悩み)
【お答え】
なるほど、お悩み、まったくもって深刻ですね。お察し申し上げます。
「このような若者に腹の底から気持ちのこもった発声をさせる方法はないでしょうか」と、あなたはおっしゃっています。
一見、ひとつのことを望んでおられるようですが、二つの問題がからみあっているようです。
一つは、腹の底からの声を出させたい。
もう一つは、気持ちのこもった声を出させたい。
私には、この二つは少し、別のことであるように思えるのです。
晩御飯をご馳走してもらった時、あざーすと元気に言える彼らがその時、「腹の底から気持ちのこもった発声」をしていることは疑いがありません。ここでは、「腹の底からの声」と「気持ちのこもった声」はうまく一致しています。
では、店頭に立って、いらっしゃいませを蚊の鳴くように囁いている彼らの気持ちは、どうなのでしょうか。
「いらっしゃいませ」という気持ちはあるものの、声にあらわすことができないのでしょうか?
だから、気持ちのこもらない声を、出しているのでしょうか?
私にはどうも、疑わしく思えるのです。
むしろ、彼らの「いらっしゃいませ」という気持ちが、腹の底からの声で示すようなものではないのだ、蚊の鳴くような声こそが、彼らの気持ちにふさわしいのだ、と考えてみることはできないでしょうか?
もしかすると「草食系」生き物である彼らは、どこであれ店に入った瞬間に、「いらっしゃいませ!」と腹の底から声をかけられると、「肉食系」動物の吠え声を聞いたように身がすくみ、とっさに逃げ出したくなるのではないでしょうか?
店長さんからの「この店で買い物しようと思ってもらえ」るように声を出しなさいという指導に真剣に応えようとすればこそ、彼らは「草食系」生き物の本能をもって、あの声を出すのではないでしょうか?
つまり、お客様の性質を、どう考えるかです。
あなたはお客様は腹の底から声をかけられると、「またこの店に来よう」と思うだろうと考えています。
彼らは、その声をかけられると「二度とここには来ないぞ」と思うだろうと考えるのです。
今後、この社会では上記の二通りのお客様のうち、どちらが優勢を占めていくでしょうか。
あなたの店では、どちらのお客さまを増やしていきたいでしょうか。
そこのところを十分に吟味されたのち、以下の二通りのやり方のどちらかを、ご選択ください。
彼らの本心はどうあれ、ともかく大きな声を出させる。お客様の気持ちや、自分の気持ちを斟酌することなく、「とにかく大きな声を出せばそれでいい」と腹式呼吸を指導する。その場合、演劇の訓練がとても役に立つと思われます。豊富な人材の中から適切なボイストレーナーを派遣いたしますので当研究所にご用命ください。
または
今後、「草食系」の人々が顧客層として増えていくことに期待する。「腹の底からの声」を要求することをやめ、彼らの本当の「気持ちを込めた」声かけを奨励する。その場合、演劇の訓練がとても役に立つと思われます。豊富な人材の中から適切な演技トレーナーを派遣いたしますので当研究所にご用命ください。
阿藤先生、聞いてください~
近頃の若い男性の草食系について、どんな風にお感じですか
うちは、配偶者の親の代からお店を経営していて、肉体労働を厭わないアルバイトの男子学生を雇っているんですね。
必要なのは明るくハキハキと礼儀正しい挨拶のできる青年なんです。
ところが、最近の大学生はめちゃくちゃ声が小さいんです。いらっしゃいませを蚊の鳴くように囁かれてもお客様には聞こえません。
ありがとうございますって大きな声で言わなくては、また この店で買い物しようと思ってもらえないよって口をすっぱくして教えても、そーすか と張り合いのない反応。
たまに、晩御飯をご馳走するんですが、そんなときだけ、あざーす と元気に言われても、おばちゃんは情けない
このような若者に腹の底から気持ちのこもった発声をさせる方法はないでしょうか(神奈川県/こぶとりおばちゃんさんのお悩み)
【お答え】
なるほど、お悩み、まったくもって深刻ですね。お察し申し上げます。
「このような若者に腹の底から気持ちのこもった発声をさせる方法はないでしょうか」と、あなたはおっしゃっています。
一見、ひとつのことを望んでおられるようですが、二つの問題がからみあっているようです。
一つは、腹の底からの声を出させたい。
もう一つは、気持ちのこもった声を出させたい。
私には、この二つは少し、別のことであるように思えるのです。
晩御飯をご馳走してもらった時、あざーすと元気に言える彼らがその時、「腹の底から気持ちのこもった発声」をしていることは疑いがありません。ここでは、「腹の底からの声」と「気持ちのこもった声」はうまく一致しています。
では、店頭に立って、いらっしゃいませを蚊の鳴くように囁いている彼らの気持ちは、どうなのでしょうか。
「いらっしゃいませ」という気持ちはあるものの、声にあらわすことができないのでしょうか?
だから、気持ちのこもらない声を、出しているのでしょうか?
私にはどうも、疑わしく思えるのです。
むしろ、彼らの「いらっしゃいませ」という気持ちが、腹の底からの声で示すようなものではないのだ、蚊の鳴くような声こそが、彼らの気持ちにふさわしいのだ、と考えてみることはできないでしょうか?
もしかすると「草食系」生き物である彼らは、どこであれ店に入った瞬間に、「いらっしゃいませ!」と腹の底から声をかけられると、「肉食系」動物の吠え声を聞いたように身がすくみ、とっさに逃げ出したくなるのではないでしょうか?
店長さんからの「この店で買い物しようと思ってもらえ」るように声を出しなさいという指導に真剣に応えようとすればこそ、彼らは「草食系」生き物の本能をもって、あの声を出すのではないでしょうか?
つまり、お客様の性質を、どう考えるかです。
あなたはお客様は腹の底から声をかけられると、「またこの店に来よう」と思うだろうと考えています。
彼らは、その声をかけられると「二度とここには来ないぞ」と思うだろうと考えるのです。
今後、この社会では上記の二通りのお客様のうち、どちらが優勢を占めていくでしょうか。
あなたの店では、どちらのお客さまを増やしていきたいでしょうか。
そこのところを十分に吟味されたのち、以下の二通りのやり方のどちらかを、ご選択ください。
彼らの本心はどうあれ、ともかく大きな声を出させる。お客様の気持ちや、自分の気持ちを斟酌することなく、「とにかく大きな声を出せばそれでいい」と腹式呼吸を指導する。その場合、演劇の訓練がとても役に立つと思われます。豊富な人材の中から適切なボイストレーナーを派遣いたしますので当研究所にご用命ください。
または
今後、「草食系」の人々が顧客層として増えていくことに期待する。「腹の底からの声」を要求することをやめ、彼らの本当の「気持ちを込めた」声かけを奨励する。その場合、演劇の訓練がとても役に立つと思われます。豊富な人材の中から適切な演技トレーナーを派遣いたしますので当研究所にご用命ください。
by atohchie
| 2003-04-01 05:44
| 缶詰製作中(書斎より)
阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。
by atohchie
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阿藤智恵NEWS
●脱原発世界会議に賛同します。安心できる明日を子どもたちに。
●阿藤智恵サイトを更新しました更新日:2013年12月31日(火)
◆これからの阿藤智恵◆
1月19日
「第3回JAZZ&お話ライブ」
1月23日
「どこそら会」
3月8・9日
「『えんげき』のじゆうじかん」の
小さなお芝居の会と「ちえよむ会」
●戯曲集『十六夜の月』を出版しました。
ご購入は阿藤智恵への直接注文または書店にてご注文ください。また、ネット書店でも購入できます。
●受賞しました。
加藤健一事務所vol.83 「シュぺリオール・ドーナツ」
念願の翻訳デビュー、果たしました!
→本作品で、第5回小田島雄志・翻訳戯曲賞をいただきました。加藤健一さん、演出の大杉祐さんはじめ公演座組の皆さん、また、翻訳作業にお力添えを下さった多くの方々に、心から感謝します。
●戯曲『死んだ女』が雑誌【テアトロ】2013年1月号に掲載されました。
★『どこまでも続く空のむこうに』の劇評をいただきました!!大変な力作です。ぜひご一読ください。2012.4.19
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●戯曲『どこまでも続く空のむこうに』が雑誌【テアトロ】2012年4月号に掲載されました。
●小説『マチゾウ』で同人誌【突き抜け4】に参加しました。
ご購入はこちらへ(「阿藤サイトから」と一言お書き添えくださいませ)。
★『曼珠沙華』の劇評をいただきました!!
ぜひご一読ください。2011.10.26
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●公演終了しました。
Pカンパニー番外公演その弐「岸田國士的なるものをめぐって~3人の作家による新作短編集~」竹本譲さん、石原燃さんと、短編を1本ずつ書きました。私の作品タイトルは『曼珠沙華』です。
★雑誌『テアトロ』10月号に三本そろって掲載されています。
●連載エッセイ「本日も行ったり来たり~トハナニカ日記~」
雑誌【テアトロ】2012年1月号に最終回が掲載されています。
●日記のお題、ください!
阿藤への質問、お悩み相談、どのようなことでもどうぞ。心こめて書かせていただきます。
お題は阿藤へのメール、または、日記へのコメント(どの記事につけてくださってもOKです)でどうぞ。
●戯曲『十六夜の月』が雑誌【テアトロ】2011年7月号に掲載されました。
●小説『ツヅキ2011』で同人誌【突き抜け3】に参加しました。
ご購入はこちらのフォームへ(「阿藤のブログから」と一言お書き添えくださいませ)。
●戯曲『バス停のカモメ』が雑誌【テアトロ】2010年1月号に掲載されました。
●戯曲『しあわせな男』が雑誌【テアトロ】2008年10月号に掲載されました。
●石井ゆかりさんの
「石井NP日記」で
インタビューを受けました。
こちらの
「ロードムービー・その1」で5番目にインタビューされています。
●阿藤智恵サイトを更新しました更新日:2013年12月31日(火)
◆これからの阿藤智恵◆
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「第3回JAZZ&お話ライブ」
1月23日
「どこそら会」
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小さなお芝居の会と「ちえよむ会」
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→本作品で、第5回小田島雄志・翻訳戯曲賞をいただきました。加藤健一さん、演出の大杉祐さんはじめ公演座組の皆さん、また、翻訳作業にお力添えを下さった多くの方々に、心から感謝します。
●戯曲『死んだ女』が雑誌【テアトロ】2013年1月号に掲載されました。
★『どこまでも続く空のむこうに』の劇評をいただきました!!大変な力作です。ぜひご一読ください。2012.4.19
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●連載エッセイ「本日も行ったり来たり~トハナニカ日記~」
雑誌【テアトロ】2012年1月号に最終回が掲載されています。
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