架空・お悩み相談室28『移動のエネルギー』
【お悩み】
昔から思っていましたけど、移動に要するエネルギーって単なる時間の長短では図りきれないんです。あそこからここまで飛行機で45分、近いね!って思っても疲れてるんです、どこかが。車を運転車を運転してで4時間もかかったってときは 肉体的な疲労に納得するのですがタクシー-飛行機-タクシーなんていうVIPな移動でもいろいろなところが疲れてるんです。位置エネルギーか何かが関係するのかもと思いますが、物理はよく分かりません。この理屈が解明できたら、疲れをとる方法、あるいは、そもそも疲れない方法、といった対処方法がとれるのではないかと思うのです。教えてください。(大阪府/dangoさんのお悩み)
【回答】
動物の体には、ある種のセンサーがあって体の移動を常に感知しています。長い生命の歴史の中で発達してきたそれは、なかなか精妙なもので、どれだけ交通手段が発達して、移動時間が短縮され、肉体的疲労が軽減されても、決して騙されることなく、移動距離に応じてにさまざまな反応をもたらします。
今、私たちが便利に利用しているGPSというシステムが、動物が体内にもっているこのセンサーの仕組みを研究し、模倣することによって実現したことは一般的にはあまり知られていませんが、私はもっと知られても良いのではないかと考えています。私たちの体の精妙な仕組みは、なんだか邪魔なように思える機能が意外なところで他の機能と密接な関連を持っていて、簡単に止めてしまってはいけないものだからです。
GPSを発明した二人の科学者が、まさにその体現者でした。
ゴーゴン・ポポール氏は生物学の権威であり、特に極小生物の生態に詳しく、生命の起源という人類最大の謎の解明に最も近い科学者として有名でした。彼のパートナー、パピリープ・ギドニグ氏はこれまた著名な脳科学者であり、人の心の不思議をもしも解明するなら彼女をおいて他にいないと言われていました。夫妻は5人の子どもを育てながら世界中の学会を飛び回る生活に疲れ果て、二人の力を結集させて、体内の移動センサーを止める方法を編み出しました。どんなに長距離を移動しても疲れるということがほとんどなくなった二人は、その後2ヵ月間にそれぞれ12本という大量の、しかもそれぞれに画期的な論文をものし、破竹の勢いで研究を進めました。ところがです。センサーが止まってちょうど2ヵ月後、奇妙な症状が二人を襲ったのです。それこそがGPS(GPシンドローム)と呼ばれた症状、言語野からGとPが失われる奇病でした。読むこと書くことができず、音も聞こえず、発音もできず、最愛のパートナーの名を呼び合うことすら不可能になった彼らが、この難病の原因が移動センサーを停止させたことにあったと気づいたのはその1年後でした。しかし時すでに遅し、壊れたセンサーが機能を取り戻すことはありませんでした。不屈の精神を持つ二人が、多くの科学者の支援を得て実現したのが失われたセンサーの機能を衛星を利用したシステムに代行させ、日々の移動に伴う疲労感を人工的に再現する仕組みでした。つまりGPSというあのシステムは、GPSという名のシンドロームの治療法の一部だったのです。
幸いにして科学者たちの努力は報われ、夫妻は言語機能を取り戻し、再び研究と家庭を両立させる幸せな人生に戻ることができました。今では彼らは全ての謎を解き明かそうとは思わないと語り、疲れたときは素直に休むよう世の人々に呼びかけています。
昔から思っていましたけど、移動に要するエネルギーって単なる時間の長短では図りきれないんです。あそこからここまで飛行機で45分、近いね!って思っても疲れてるんです、どこかが。車を運転車を運転してで4時間もかかったってときは 肉体的な疲労に納得するのですがタクシー-飛行機-タクシーなんていうVIPな移動でもいろいろなところが疲れてるんです。位置エネルギーか何かが関係するのかもと思いますが、物理はよく分かりません。この理屈が解明できたら、疲れをとる方法、あるいは、そもそも疲れない方法、といった対処方法がとれるのではないかと思うのです。教えてください。(大阪府/dangoさんのお悩み)
【回答】
動物の体には、ある種のセンサーがあって体の移動を常に感知しています。長い生命の歴史の中で発達してきたそれは、なかなか精妙なもので、どれだけ交通手段が発達して、移動時間が短縮され、肉体的疲労が軽減されても、決して騙されることなく、移動距離に応じてにさまざまな反応をもたらします。
今、私たちが便利に利用しているGPSというシステムが、動物が体内にもっているこのセンサーの仕組みを研究し、模倣することによって実現したことは一般的にはあまり知られていませんが、私はもっと知られても良いのではないかと考えています。私たちの体の精妙な仕組みは、なんだか邪魔なように思える機能が意外なところで他の機能と密接な関連を持っていて、簡単に止めてしまってはいけないものだからです。
GPSを発明した二人の科学者が、まさにその体現者でした。
ゴーゴン・ポポール氏は生物学の権威であり、特に極小生物の生態に詳しく、生命の起源という人類最大の謎の解明に最も近い科学者として有名でした。彼のパートナー、パピリープ・ギドニグ氏はこれまた著名な脳科学者であり、人の心の不思議をもしも解明するなら彼女をおいて他にいないと言われていました。夫妻は5人の子どもを育てながら世界中の学会を飛び回る生活に疲れ果て、二人の力を結集させて、体内の移動センサーを止める方法を編み出しました。どんなに長距離を移動しても疲れるということがほとんどなくなった二人は、その後2ヵ月間にそれぞれ12本という大量の、しかもそれぞれに画期的な論文をものし、破竹の勢いで研究を進めました。ところがです。センサーが止まってちょうど2ヵ月後、奇妙な症状が二人を襲ったのです。それこそがGPS(GPシンドローム)と呼ばれた症状、言語野からGとPが失われる奇病でした。読むこと書くことができず、音も聞こえず、発音もできず、最愛のパートナーの名を呼び合うことすら不可能になった彼らが、この難病の原因が移動センサーを停止させたことにあったと気づいたのはその1年後でした。しかし時すでに遅し、壊れたセンサーが機能を取り戻すことはありませんでした。不屈の精神を持つ二人が、多くの科学者の支援を得て実現したのが失われたセンサーの機能を衛星を利用したシステムに代行させ、日々の移動に伴う疲労感を人工的に再現する仕組みでした。つまりGPSというあのシステムは、GPSという名のシンドロームの治療法の一部だったのです。
幸いにして科学者たちの努力は報われ、夫妻は言語機能を取り戻し、再び研究と家庭を両立させる幸せな人生に戻ることができました。今では彼らは全ての謎を解き明かそうとは思わないと語り、疲れたときは素直に休むよう世の人々に呼びかけています。
by atohchie
| 2002-04-01 03:54
| 缶詰実験室(お芝居への道)
阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。
by atohchie
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●脱原発世界会議に賛同します。安心できる明日を子どもたちに。
●阿藤智恵サイトを更新しました更新日:2013年12月31日(火)
◆これからの阿藤智恵◆
1月19日
「第3回JAZZ&お話ライブ」
1月23日
「どこそら会」
3月8・9日
「『えんげき』のじゆうじかん」の
小さなお芝居の会と「ちえよむ会」
●戯曲集『十六夜の月』を出版しました。
ご購入は阿藤智恵への直接注文または書店にてご注文ください。また、ネット書店でも購入できます。
●受賞しました。
加藤健一事務所vol.83 「シュぺリオール・ドーナツ」
念願の翻訳デビュー、果たしました!
→本作品で、第5回小田島雄志・翻訳戯曲賞をいただきました。加藤健一さん、演出の大杉祐さんはじめ公演座組の皆さん、また、翻訳作業にお力添えを下さった多くの方々に、心から感謝します。
●戯曲『死んだ女』が雑誌【テアトロ】2013年1月号に掲載されました。
★『どこまでも続く空のむこうに』の劇評をいただきました!!大変な力作です。ぜひご一読ください。2012.4.19
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●戯曲『どこまでも続く空のむこうに』が雑誌【テアトロ】2012年4月号に掲載されました。
●小説『マチゾウ』で同人誌【突き抜け4】に参加しました。
ご購入はこちらへ(「阿藤サイトから」と一言お書き添えくださいませ)。
★『曼珠沙華』の劇評をいただきました!!
ぜひご一読ください。2011.10.26
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●公演終了しました。
Pカンパニー番外公演その弐「岸田國士的なるものをめぐって~3人の作家による新作短編集~」竹本譲さん、石原燃さんと、短編を1本ずつ書きました。私の作品タイトルは『曼珠沙華』です。
★雑誌『テアトロ』10月号に三本そろって掲載されています。
●連載エッセイ「本日も行ったり来たり~トハナニカ日記~」
雑誌【テアトロ】2012年1月号に最終回が掲載されています。
●日記のお題、ください!
阿藤への質問、お悩み相談、どのようなことでもどうぞ。心こめて書かせていただきます。
お題は阿藤へのメール、または、日記へのコメント(どの記事につけてくださってもOKです)でどうぞ。
●戯曲『十六夜の月』が雑誌【テアトロ】2011年7月号に掲載されました。
●小説『ツヅキ2011』で同人誌【突き抜け3】に参加しました。
ご購入はこちらのフォームへ(「阿藤のブログから」と一言お書き添えくださいませ)。
●戯曲『バス停のカモメ』が雑誌【テアトロ】2010年1月号に掲載されました。
●戯曲『しあわせな男』が雑誌【テアトロ】2008年10月号に掲載されました。
●石井ゆかりさんの
「石井NP日記」で
インタビューを受けました。
こちらの
「ロードムービー・その1」で5番目にインタビューされています。
●阿藤智恵サイトを更新しました更新日:2013年12月31日(火)
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