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架空・お悩み相談室52『老後の悩みなんですが』

【お悩み】
老後の悩みなんですが、
夫がいつも一緒にいようねっ!と言っているのです……
私は顔では笑って「うん」と言っていますが
心の中では「うんざり~~~」と思ってしまいます。
こんな私にアドバイスを下さい。(神奈川県/赤いりんごさんのお悩み)

【お答え】
「うんざり」とはどういう意味でしょう。辞書を引くと、「げんなり」と同じ意味であると書かれているのみで詳しいことは述べられておりませんが、「うんざり」は、実は、古くは「うんぞあり」と言われておりました。「うん」とは、もちろん「運」です。幸運です。「運ぞ在り」。「うんざり」とは、本来「幸運がまさにある」という意味なのです。
「げんなり」の方はどうでしょう。げんとは、「験」です。縁起であり、やはり幸運です。「験也」。つまり、「幸運だ」ということ。「げんなり」と「うんざり」、なるほど瓜二つです。

かつて人の暮らしに、何かが「豊富にありすぎる」という状況は、訪れるものではありませんでした。豊作や豊漁はあっても、たいていは皆がたらふく食べるに足りるというだけのこと、大きな余剰が出るほどのことは滅多になく、豊作の後には不作、豊漁のあとには不漁に備えることは人々の知恵として受け継がれておりましたから、「ありすぎて困る」などという考えは、浮かんでくるはずもないことだったのです。「たくさんある」こと即ち「幸運」であり、「験」であると考えられたのは、自然なことですね。

この相談室も回を重ね、私もずいぶんといろんなことを学んでまいりました。近頃はお悩みが深刻であればある程、「あなたの心の声に耳をすませましょう」と申し上げることにしております。どんなに難しいお悩みも、必ずやその方ご自身の心の声の中に答えが見出されることはまことに驚くばかりです。

「うんざり~~~」という叫びで、あなたの心が本当は何を言いたかったのか、あなたの本当の望みは何なのか、どうか今一度、じっと耳をすませてみてください。
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by atohchie | 2002-04-01 23:24 | 缶詰製作中(書斎より)

架空・お悩み相談室51『白髪はなぜ根元からなのですか!?』

【お悩み】
阿藤さま、ワタクシ、アラなんとかなどと自分の年齢を誤魔化し気味に言うようになって数年、ふと気付くとあるのです。確かに昨日まではチラリとも見えなかった(はずの)白いモノが。しっかりと根元から真っ白な一本が。こ、これは白髪ではありませんか!一体なぜ?
ええ、分かってますよ、もちろん。これはいわゆる正常な老化現象です。もちろん受け入れます。しかし、なぜ根元からなのですか!?だって今日から白髪になってやろうと思ったのなら、今日伸びるところだけ白くなればいいじゃない。

明日起きたら、またいつの間にか、この素敵な(はずの)黒髪の貴重な一本が、いやもしかしたら数本が、根元から真っ白になっているかと思うと、恐ろしくて朝を迎えることも鏡を見ることもできそうにありません。助けてください。(大阪府/dangoさんのお悩み)

【回答】
我が家の窓からは、青空に向かって伸びる竹林が見えます。竹は、それぞれに空を仰ぎ、おのれの力のみを頼み、すっくと立っているようでありながら、同じ雨にうたれ、同じ風に吹かれていっせいにしなり、揺れてさわさわとさざめく様子は、皆でひとつの生き物のようでもあります。竹たちの根が、地面の中でつながり、からみあって地面をしっかりとつかんでいることを思えば、竹林は一本一本の竹の集まりなどでは決してなく、竹林という一つの生命体なのかもしれません。
私たちの頭皮にはえる髪はどうでしょうか。お察しの通り、髪は100,000本という気の遠くなるような数の、独立した一本一本の毛髪の集まりではありません。同じ雨にぬれ、同じ風に揺れる、ひとつのものです。白髪は生まれながらにして白髪となるものもあれば、途中から白髪になるものもありますが、同じ髪というひとつのまとまりのなかで、黒髪たちとともに暮らしていて、黒髪たちに守られています。いえ、黒髪たちと白髪たちという区別が彼らの中にあるとは言えません。同じ一つの髪として、ただ身を守るべしという本能から、黒髪たちは白髪たちを隠すのかもしれません。私に言えるのは、白髪たちは集まって束にならない限り、黒髪たちに隠されて目立たない存在であるということです。
あなたの見つけた白髪は、生まれながらにして白髪だった一本です。決して今日になって急に根元から白くなったのではありません。黒髪たちに守られて、それだけの月日をあなたの頭皮ではぐくまれて生きてきた黒髪たちの仲間なのです。髪の長さから、その月日の長さをどうぞ思ってくださいませ。朝に夕に鏡をのぞかれるたび、仲間を守ってゆれた黒髪たちを思ってくださいませ。はたして白髪とは恐れられなければならないものでしょうか。青々とさざめく竹林を見やる時、人の胸に湧き上がる喜びを、鏡の中の輝く一本の白髪を見るときにもまた、感じるような私たちであってはならないわけが、何かあるでしょうか。
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by atohchie | 2002-04-01 23:23 | 缶詰実験室(お芝居への道)

架空・お悩み相談室50『小さな悩みが3つあります』

【お悩み】
突然ですが小さな悩みを3つばかり相談させてください。
(1)うま、うみ、うむ、うめ、と全て意味があるんですが「うも」という言葉には何か意味があるんでしょうか。
(2)最近人混みを歩いていて人と衝突することが増えたのですが、これはこちらが退化しているのか、衝突を避けない人が増えているのか、どちらだと思いますか?
(3)先日転倒して尾てい骨を強打したのをきっかけに馬の尾のような尻尾が生えてきたのですが、このまま生やし続けるのと、手術などで取り去るのとどちらがいいでしょうか?
いずれも取るに足らないささやかな悩みばかりなのでまとめて送ってしまいますが、お時間のある時にでも相談に乗っていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。(東京都/たかしなさんのお悩み)

【回答】
(1)「うも」は「芋」の古語です。「うも」が「いも」に変わったのは、「いも」がさびしがり屋だからです。かつて女というものは、「妹」「姉」「妻」「恋人」「愛人」、すべてが「いも」でした。しかしいつの間にか、そんなにも多くの女を自分の物にしていた「いも」は、「同じ親を持つ年下の女」しか扱えなくなりました。それも「うと」の助けをかりてです。「いも」は寂しかったので、「うも」から「芋」を奪ったのです。「いも」はそれですっかり、寂しくなくなったのです。女というものはたいてい「芋」が大好きだからです。いっぽう「うも」はどうしたかって?「うも」ははじめから孤独に強い性質だったので、千年の孤独に耐え、今も独り身を通しています。それでもたまに、万葉集なんか読んでくれる人がいると、恥じらいつつも微笑みを浮かべてみせるのです。

(2)これはあなたの進化であろうと思います。羨ましいことです。私は人ごみを歩いても人に衝突しません。あなたは都会に住むあらゆる人々を抱擁するべきです。あなたに向かって突進してくるその人は、あなたの祝福を求めているのです。どうぞしっかりと背中を抱き、「よくできました」とか、「確かにあなたはここにいるよ」とか、「地球を回すものは愛ですからね」など、その人の求めることばをかけてあげてください。

(3)この問題については古くから多くの論争がなされ、いまだ決着がついておりませんが、望んでも生えてくるものではない馬の尾を手術で取り去ってしまうのは惜しいと考える人々が多数を占めているのは確かな事実です。ですから、常識に従うならば、あなたは断然、その尾を伸ばすべきです。しかし、そうした意見を述べる大半の人々の臀部には、馬の尾は生えていないということは、見落とされがちな点です。いったい、馬の尾をもっていない人間が、馬の尾の貴重さを語ることに意味があるでしょうか。馬の尾をふさふさとゆらしながらしかも人間であり続けることの煩雑さが、彼らにわかるのでしょうか。私としましては、世の論調に左右されることなく、日々自らの馬の尾と対峙した上で、ご自分の結論を出されることこそ、望ましいと存じます。その際、どうぞご家族とも話し合われますよう。自らが馬の尾をもつということと、夫が、あるいは父が、息子が馬の尾を生やしているということは、全く違う意味を持っています。あなたの尾は、決してあなただけの尾ではないことをどうぞ忘れずに。あなたが存分に熟考され、悔いのない方法を選びとられますことを、祈ってやみません。
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by atohchie | 2002-04-01 23:22 | 缶詰製作中(書斎より)

架空・お悩み相談室49『心臓がバクバクするのは』

【お悩み】
「動機と言えばドキドキするものですが、ぼくの心臓はバクバクします。これは何と呼べばいいですか?」(東京都/たかしなさんのお悩み)

【回答】
正直に告白します。お悩みを拝見して、「動機? おかしいこと」とあたくし、思ってしまいました。ドキドキするものっていえば、「動悸」よね。きっとたかしなさまはお忙しくて、変換ミスに気付かなかったのだわ。よくあることよ。ここは「動機とは動悸の間違いでしょうか?」なーんて不粋な確認をしたりせずに、さりげなく直して差し上げておきましょう。で、あらためてご質問はと……なるほど、これはことば遊びね! ドキドキするのが動悸、では、バクバクするのは? 何かしゃれをひねってみましょうか。

そう考えを進めたところでふと、胸がざわざわいたしました。
……こんな単純なことかしら、ほんとうに?

もしかしてたかしなさまは、なんであれ物事は、ときめきがなければ始められないものだということをおっしゃっているのかも。心臓がドキドキと高鳴るくらいの緊張感、ワクワク感があってこそ、物事はスタートできるもの。しかしぼくほどのものになると、何事を始めるにあたっても、ドキドキくらいじゃ不足なのだ、バクバクするほどのスリル、心臓がぱっくりと口を開けて、そこから鮮血が流れ出すかと思われるほどの高揚感がなければ手をつけようという気がしない、と、これはたかしなさまの、安易な喜びには目もくれず、真に生きる実感を、命がけの冒険の末にのみ得られる真の歓喜を求めて切磋琢磨された方だけが至ることのできる、ある境地を示しておられるのではないかしら?
あたくし、刹那、息がとまるほどの感動を覚えました。
そうなのよ。動機といえば、ドキドキするもの。それに気づいているだけでも立派だわ。だけどこの世には、バクバクするほどのひらめき、悶絶するほどの思いつきというものがあるものなのよ。そのことを教えてくださったたかしなさまは、決してあの方のバクバクする心臓に、ことば遊びのしゃれた名づけなど求めてはいらっしゃらないのだわ。そんなもの、つまらない。何を申し上げたって、たかしなさまの心臓をバクバクさせることなどかなわぬ夢よ。ええ、正直に告白いたします。たかしなさまのバクバクする心臓に名前をつけることなど、あたくしには到底できない相談でございますわ。ただ、たかしなさまの到達なされた至福の境地に思いを致すことが、ただの一瞬であれわが身に許されたことに、深くしみじみとした歓びをかみしめるばかりでございます。ことばもでない感謝の心を、ただ一言にこめまして、お答えに代えさせていただきます。たかしなさま、ありがとうございました。
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by atohchie | 2002-04-01 23:21 | 缶詰実験室(お芝居への道)

架空・お悩み相談室48『思い出しそうで思い出せない』

【お悩み】
微妙に思い出しそうで思い出せないことがあります。
いつもは思い出すのをやめないでいたら大概、ほらほらあ~近い、なんか当ってる、と、ちらっちら顔を出しながらそのうち、ばあ!と、どや顔をしてでてくるのですが、今回のやつは長いこと存在すら忘れていたので少しも顔をだしてくれないのです。

このまま一生でてきてくれないのでしょうか?

なんだかそう思うと切なくなってきました。

もしかしてあきれられてしまったのでしょうか。
それとも逆にやつが私を忘れてしまったのでしょうか。

せめて私のことなど忘れ、楽しくすごしているといいのですが。

(猫になきかえす女さんのお悩み)

【回答】
ミヒャエル・エンデの名作『モモ』をご存知でしょうか。「灰色の男たち」というのが、人々から時間を盗んでいくお話です。
実際のこの世界でも、人々はいつも時間が足りなくて困っていて、急いでも急いでも追いつかない感覚にとらわれているようです。その感覚は、まさに「何者かに奪われている」というよりほかないような感じですから、「灰色の男たち」は、本当に彼らが「灰色」かどうか「男」かどうかはともかく、実在していると言っていいですよね。

同様に、この世界には「思いつき」を盗む怪盗団が存在します。何もかもが謎に包まれた集団ながら、ここでは仮に彼らを「へんでろ団」と呼びましょう。へんでろ団は、人々の間に何食わぬ顔をしてうろついていて、誰であれ、何か思いついた瞬間に横からさっと奪い取ります。そのわざはあまりにすばやく、被害に会った人は「あ? 今なにか言おうとしたけど忘れた」とか「ええと、あの、あれ、あのほら、いるじゃない、あの人、誰だっけ?」とか言って少しおろおろしたとしても、それですっかり忘れてしまいます。「何者かに奪われている」といった感覚さえ残さないのです。へんでろ団は、灰色の男たちなんかよりもっともっとずっと昔から、ほとんど人間というものが生まれたときからこの世に存在しているのです。年季が違うのです。
へんでろ団に奪われた思いつき「ねえ、冷蔵庫の青海苔、もう切れそうじゃなかった?」とか「3丁目の田中商店の沖縄に行った息子さん」とか「心にあいた穴と、心の隙間ってどう違うのかしら?」とかは、様々に加工されて、やつらのアジトを飾ります。
中にしつこい人がいて、「あー何だっけ、何を言おうとしたんだっけ、うーなんだっけ? 思い出しそうで思い出せない」とやっておりますと、アジトに飾られたその人の思いつきは持主のもとに帰りたがって鳴きます。きーん、きーんと鳴く思いつきもあれば、ピルピルピル、と鳴るものもあります。アジトでは思いつきが鳴りだすと見張りが付き、思いつき主に取り戻されないよう、蜘蛛の糸のような細い細い絹糸で、思いつきをぐるぐる巻きにしたり、あるいは、蓋つきのお鍋に入れてぐらぐらと煮立てたり、いろんなことをいたします。それでも思いつき主が思い出してしまえばそれまで、盗まれた思いつきはアジトからきれいに消えてしまいます。思いつき主が思い出すのを諦めてしまいますと、思いつきは黙って静かになり、きーん、きーんと、あるいは、ピルピルピル、と光ります。

そのとき思いつきが思いつき主を恨んだり、軽蔑したりしているかどうか、私にはわかりません。ただ、あなたがその思いつきを思いだそうとしている限り、思いつきはへんでろ団のアジトで、その思いつきにしか出せないような声で、キロキロキロと、あるいはウェーィウェーイと、今も鳴いているということは確かです。
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by atohchie | 2002-04-01 23:20 | 缶詰実験室(お芝居への道)

架空・お悩み相談室47『嫌いなオヤジに好かれます』

【お悩み】
相談です。
嫌いなオヤジに好かれるという特異体質があります。
なぜ、嫌いなオヤジに好かれるのでしょうか。
ホルモンとか、関係あるのでしょうか????

特に、自分勝手で、横柄で、上から目線のヤツに好かれます。

どうすれば寄ってこないようにできるのでしょうか。
オヤジといえども傷つけたくはないのですが、
どんなに 寄ってくるなオーラを出してもダメなときがあります。

私はどうしてこうなるのでしょうか、そしてどうすればいいのでしょうか。
(厚木市/ハンサムちゃんのお悩み)

【回答】
ホルモンは関係ありません。

根本的な改善策をこうじるには、人間の特性の一つ、「うまくいっていることは気にならない」という性質に注目するのが良いでしょう。これは誰にでも備わっている性質であって、あなたの特異体質ではありません。人間は向上心をもつ生き物です。向上心とは、自分をとりまくありとあらゆる状況の中で、うまくいっていないところに目をつけ、それを解決しようとするところから始まるものですから、向上心豊かな人間という生き物が、うまくいっていることは気にならず、うまくいかないところが気に障る、というのはまったく合理的な心の働きなのです。
しかし時に、これがよりよい暮しの妨げとなることがあります。

もうひとつ、あまり嬉しくもないお知らせに見えるかもしれませんが、大切な真実をひとつ、お教えします。
オヤジというものは、皆、オヤジです。皆、似た性質を持っています。あなたの嫌いなオヤジたちと、好きなオヤジたち、よく観察をしてみますと、表面的にはいろいろと差があれど、その大半は表面の差にすぎないことがやがて明らかになるはずです。気配りができ、丁重で、対等目線のオヤジも、自分勝手で、横柄で、上から目線のオヤジも、根本的なところで、もう本当に、何が何やら見分けがつかないくらい似たり寄ったりなのです。

人間の心に備わる向上心ゆえの、「うまくいっていることは気にならない」に、「オヤジはみんな似たり寄ったり」を加えて、あなたの状況を考察すると、どのような結論が導かれるでしょう。

それはすなわち、嫌いなオヤジに好かれるあなたは、好きなオヤジにも必ず好かれているということです。

オヤジを遠ざける方法はもちろん数々ありますが、お教えすることはいたしません。あなたが、好きなオヤジをも必ず遠ざけることになり、その上、少なからぬワカモノたち、オンナたちをも遠ざけることになるのは間違いないからです。悲しいかな、オヤジというものは正しく人の魅力に反応するのです。オヤジたちをひきつけるあなたの魅力は、その多くが、オンナたちやワカモノたちにも作用するのです。

ではどうすれば?

嫌いなオヤジたちがよってきたとき、じつはその中に、それほど嫌いでもないオヤジが混ざっていること、また、オヤジを惹きつける同じ魅力のために、愛嬌のあるオンナたちや、いい匂いのするワカモノたちもまた寄ってきていることに敏感になりましょう。彼らの存在に気づけるようになれば、あなたのイライラはかなりの程度、軽減するはずです。どうぞお試しください。

また、この方法は、オヤジにかぎらず、あらゆる嫌な存在に応用できます。嫌なものに囲まれた時、大事なことは、嫌なものには鈍感に、好きなものに敏感になることです。

「蛇を避ける鼠は団栗を見逃す」と、古来、賢者たちによって言われたことばは、こうした教えを現代に伝えているのです。
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by atohchie | 2002-04-01 22:17 | 缶詰実験室(お芝居への道)

架空・お悩み相談室46『台風が来ると血が騒ぎます』

【お悩み】
阿藤せんせい 台風が来ると、血が騒ぎ、外に出て戦闘態勢で傘をさしてセブンイレブンに行ってしまいます。なぜ、このような気分になるのか、それを抑えて家にいるべきなのか自分の気持ちを抑えるのにいつも苦しんでます。どうしたらいいでしょうか。 (厚木の闘士さんのお悩み)

【回答】
平安時代から鎌倉時代にかけて、「野分の鳥追い」と言われた人々がありました。「野分の鳥」というのは、台風の目の中でのみ産まれ、美しい声で鳴き交わし、つがいとなりまた卵を産むと言われる伝説の鳥です。野分の鳥は恐ろしく美しい、ひとときも同じ色にとどまらぬ瑠璃色、また緋色、あるいは若草色などに色を変えつつきらめく羽根を持ち、その声は聞くものの命を十年延ばし、さらにその卵は金色に輝いて、それを口にしたものに不老不死をもたらすと言われ、世の高貴なる人々、永遠の命を求める人々の垂涎の的でありました。大型の台風が美しい目の形を保ったまま十分に長く勢力を保つときにしか、野分の鳥を追うことはできません。台風の目の中でたとえ野分の鳥が生まれても、成鳥となる前に目が崩れ、熱帯低気圧となってしまうこともたびたびあり、貴族に高い扶持をあてがわれて養われていた野分の鳥追いの中には、若いころから修業を積み、このものこそはと見込まれた狩人が、その若さの花が萎れてしまうまで狩り場である台風にめぐり合うことができず、とうとう大きな台風がやってきたとき、そのただなかに乗りこんだ舟はまたたくまに木の葉のようにぐるぐると回り、海の藻屑と消えた、といったような悲しい物語も多く残されています。
もうおわかりですね。
あなたの魂は、おそらく野分の鳥追いなのです。荒れ狂う海に、櫂一本で飛び込み、野分の鳥を追ったあの青春を忘れることができぬまま、櫂の代わりに傘を携え、狩猟本能のおもむくままにやみくもにセブンイレブンに駆けこんでしまうのでしょう。しかしセブンイレブンに永遠の命を与える鳥はいません。せいぜいビールかアイスクリームを買ってしまって風邪をひくのが関の山でしょう。あなたの心の渇きはセブンイレブンへの冒険では決して癒されないはず。
どうぞあなたは本来の姿を思い出して下さい。どうぞ野分の鳥追いとしての誇りを取り戻し、修業をしたうえで、次の台風に備えてください。野分の鳥追いの修業方法は、伝説のかなたにずいぶんと消えてしまっておりますが、唯一、風と雨に負けず、しっかと目を見開くことができるようになるため、大雨の日、全力で疾走する裸馬にまたがり、決してまばたきをせずにいるというものが言い伝えられております他に、通常のボート乗りやカヌーイング、また鳥一般の習性を知るためのバードウォッチングなども、一助になるはずだと愚考いたします。
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by atohchie | 2002-04-01 21:28 | 缶詰実験室(お芝居への道)

架空・お悩み相談室45『下を向いて歩いてしまいます』

【お悩み】
姿勢よく歩きたいといつも思っているのに、気がつくと下を向いて歩いています。
どうしたらいいでしょうか。(神奈川県/おなかいっぱいさんのお悩み)

【回答】
おやおや、変わったお悩みですね。
何を隠そうワタクシ、よく地面に注意して歩きたいといつも思っているのに、気がつくといつも地面以外の何かを見てきょろきょろしてしまっています。街中で知り合いがいるとすぐに見つけるため、「バッタリ星人」と呼ばれていますが、そんなことがなんの喜びになりましょう。ちょっとした段差にけつまずき、しょっちゅう転びかけている私は、稽古場でも劇場でも置かれた道具を蹴飛ばしたり、床を這うケーブルをひっかけたり、ああ、そうだ、照明機材をぶっ壊したことさえあり、作家となった今は、無駄に動き回って事故を起こさないよう気をつけているので惨事を防げていますが、演出助手時代はどうしようもなくやらかして皆の失笑を買っていました。そうです。あまりにもやらかすので、誰も怒らないのです。「あーあ、やっちゃった。あいつはほっとけ、復旧!」って感じです。あーあ思い出してもいたたまれない。穴があったら入りたい。
しかしです、思い起こせば私が下を向いて歩きたいと思い始めたのは小学生の頃でした。決して事故を起こしたり、転んだりしたからではありません。私の姉という人が、よく足元を見て歩く人でして、学校帰りに亀を拾って来たのです。道の真ん中に、珍しい石のように落ちていたと言うのです。それにどじょうを拾って帰ったこともあります。同じ道を同じように帰宅するのになぜ姉だけが生き物を拾ってくるのでしょう。ついさっき歩いてきた道に、亀は美しい甲羅を見せてうずくまっていたはず、なぜ見逃したかと思えばなんともいえず心のうちがざわめきました。くやしいような、かなしいような、残念な思いを胸に、明日からはしっかり下を向いて歩こうと誓ったのはつい昨日のことのようなのに、あれから30年以上が過ぎ、私は今に至るまで、道で貴重なものを拾ったことがありません。
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by atohchie | 2002-04-01 20:11 | 缶詰実験室(お芝居への道)

架空・お悩み相談室44『浮気をする男が悪いのか、疑い深い女が悪いのか』

【お悩み】
ニュースでカレログというスマホのアプリが問題になっていると言ってました。浮気をする男が悪いのか、疑い深い女が悪いのか。そこらへんを、深く浅くえぐってお聞かせください。(横浜/bonpapaさんのお悩み)

【回答】
「カレログ」という「スマホ」の「アプリ」についてのお悩みですが、3つとも全く関係ない私、そもそも「カレログ」ってなんだ?と「ググる」とこから始まりまして、知らない人に説明するのもめんどくさい。私の結論は、「浮気をする男が悪い」でも、「疑い深い女が悪い」でもございません。商品名がそうだからといって女が男に仕掛ける必要もありませんし、男と女の問題にかかわると考える必然性もありません。もしも、ある二人の仲に何か問題があるとするならばそれは「スマホ」の「アプリ」とは何の関係もありませんし私たちにも関係ありません。およそ世の二人組というものはすべからく似合いの二人であります。そんなことより私には、「スマホ」のほうが問題なのであります。「スマホ」とは「スマートフォン」の略ですよね。「スマートホン」ではなく「スマートフォン」。それを略してなぜ「スマホ」。いやしくも言語社会学を専攻した私でありますから、「スマフォ」と言うべきだ、「スマートホン」と言うべきだという主張をする意図は毛頭ありません。現代日本語のひとつの興味深き現象として、ただこのあり様を見つめるのみであります。そして関西人だからでしょうか、「スマホ」ということば、見た目にも響きにも「アホ」のにおいを感じ取るのであります。「賢い電話」が「アホ」に転じるこの不思議、日本語の未来に向けて、一つの小さな道しるべとなっているのではないでしょうか。
ところでbonpapaさんご自身が、「カレログ」を仕掛けられ、二人組の一員としての具体的お悩みを抱えていらっしゃる場合は、その旨あらためてご相談ください。どちらが悪いかずばり判定して差し上げます。
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by atohchie | 2002-04-01 19:42 | 缶詰製作中(書斎より)

架空・お悩み相談室43『反省していて良いですか』

【お悩み】
阿藤さま、お悩みです。阿藤さまの哲学的生き方の極意は「反省しない」「反省しないで生きる時こそ生命は生命らしく輝く」。極めて素晴らしく思われます。
しかし、私のような凡人は、反省したり、反省したことにして、ココロの安泰を得るのでして。それはつまり、言い訳?かもしれません。
あ~またやってしまった、まぁいいか。仕方ない。反省してるだけマシさ。きっと神様は反省しないヒトより反省するヒトに力をくれるよね。ドントマインド。ネバーギブアップ。なあんて具合です。
そんなことで良いのかは常に悩みの種でした。阿藤さまの哲学的極意に触れ、悩みはますます混迷状態に陥っております。お助けを。(大阪府/dangoさんのお悩み)

【回答】
ずばり申し上げます。
そんなことで良いのです。
まず最初に、「反省しないで生きる時こそ生命は生命らしく輝く」ですが、これに対して、「人は反省する葦である」という有名な言葉があります。およそ生物という生物の中で、現在だけでなく、未来と過去という二つの時制までを自在にいったりきたりするのは、現代の科学で判明しているところでは、人間だけであります。人間が過去を思う時、これすなわち、反省、もしくは郷愁のいずれかであり、おおよそ日本人の場合、時代により違っておりますが、現代日本人の平均値は、おおよそ反省78%、郷愁20%、その他2%と統計によって数字が出ております。

反省とは、すなわち、人間らしさの証です。
反省をしないものは「生命らしい」。
反省をするものは「人間らしい」。
そのどちらがより優れているかを判断するのは、私どもの仕事ではありません。

そこで、神の出番です。
神ははたして、「反省しないヒトより反省するヒトに力をくれる」か?
その答えは、YESです。

日本語でいわゆる神という場合、世界で非常に大きな力を持つ一神教の神を指す場合と、そうでない場合があります。あなたが心に描いている神は、後者のはずです。私たちが日本語でごく曖昧に「神様は……」と表現する場合、その神の姿はごく曖昧なものであり、神はあなたによって規定されます。言いかえれば、あなたが「反省しないヒトより反省するヒトに力をくれる神様」を思い描くとき、そこにまさにそうした神が来臨するのが、この世の真実なのです。

ですから、おめでとうございます。
あなたは間違いなく、反省の数だけ、力を蓄えているのです。
反省による心の安泰を、どこまでもお求めなさいませ。
神はあなたと共にあります。
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by atohchie | 2002-04-01 18:09 | 缶詰実験室(お芝居への道)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


by atohchie

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●戯曲集『十六夜の月』を出版しました。
テアトロ1月号
ご購入は阿藤智恵への直接注文または書店にてご注文ください。また、ネット書店でも購入できます。


●受賞しました。
d0024220_16184139.jpg
加藤健一事務所vol.83 「シュぺリオール・ドーナツ」
念願の翻訳デビュー、果たしました!
067.gif→本作品で、第5回小田島雄志・翻訳戯曲賞をいただきました。加藤健一さん、演出の大杉祐さんはじめ公演座組の皆さん、また、翻訳作業にお力添えを下さった多くの方々に、心から感謝します。

●戯曲『死んだ女』が雑誌【テアトロ】2013年1月号に掲載されました。テアトロ1月号

★『どこまでも続く空のむこうに』の劇評をいただきました!!大変な力作です。ぜひご一読ください。2012.4.19
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland



●戯曲『どこまでも続く空のむこうに』が雑誌【テアトロ】2012年4月号に掲載されました。
テアトロ4月号



●小説『マチゾウ』で同人誌【突き抜け4】に参加しました。
突き抜け4
ご購入はこちらへ(「阿藤サイトから」と一言お書き添えくださいませ)。


★『曼珠沙華』の劇評をいただきました!!

ぜひご一読ください。2011.10.26
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland


●公演終了しました。

Pカンパニー番外公演その弐「岸田國士的なるものをめぐって~3人の作家による新作短編集~」竹本譲さん、石原燃さんと、短編を1本ずつ書きました。私の作品タイトルは『曼珠沙華』です。
★雑誌『テアトロ』10月号に三本そろって掲載されています。
テアトロ10月号

●連載エッセイ「本日も行ったり来たり~トハナニカ日記~」
雑誌【テアトロ】2012年1月号に最終回が掲載されています。
テアトロ1月号

●日記のお題、ください!
阿藤への質問、お悩み相談、どのようなことでもどうぞ。心こめて書かせていただきます。
お題は阿藤へのメール、または、日記へのコメント(どの記事につけてくださってもOKです)でどうぞ。



●戯曲『十六夜の月』が雑誌【テアトロ】2011年7月号に掲載されました。
テアトロ7月号

●小説『ツヅキ2011』で同人誌【突き抜け3】に参加しました。
突き抜け3
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●戯曲『バス停のカモメ』が雑誌【テアトロ】2010年1月号に掲載されました。
テアトロ1月号

●戯曲『しあわせな男』が雑誌【テアトロ】2008年10月号に掲載されました。
テアトロ10月号

●石井ゆかりさんの
「石井NP日記」で
インタビューを受けました。
こちらの
「ロードムービー・その1」
で5番目にインタビューされています。

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