本の私有革命について(その4)

そう、そのようにして、とうとう、機は熟した。
今、やるしかない、そう思ったわたしは、
本を前に、何度もペンを握った。
が、できない。
できないのです。
幼い頃から心身に刷り込まれた
「本は、みんなのもの よごしたり おったりしないで だいじにあつかいましょう」
が、解けないのです。
刷り込み、恐るべし。

いよいよ困ったわたしの目の前に現れたのが
この新聞記事であった。

毎日新聞 2013年10月18日(金)朝刊
論点[国のために死ぬこと]。

左上に、「国家神道の主な変遷」として簡単な年表が付され
3人の論者が、
国家儀礼としての戦没者追悼について
靖国体系の歴史について
「国家のため」という枠組みに収まりきらない「一個の死」について
稿を寄せているのであります。

興味ぶかそうな1ページではないか!
けど寝起きのねぼけあたまに、
文字のぎっしり詰まったオピニオンページは難しかった。
何度読んでも目が活字の上を素通りしていく。

ついにわたしは鉛筆を手にとった!



これぞまさしく本の私有革命に、火がついた歴史的瞬間であった。
たかが新聞であったが、その行為はたしかに革命であった!
見よ!
難解な活字の塊であった紙面が、
右手に握られた鉛筆によって、意味をもつことばに切り分けられていくではないか!
脳内に、「わかる!わかる!」という叫びがこだましました。
歓喜の叫びです。

実に、線をひくということは、大変なことでありました。
わたしは若い時わりに真面目なほうで受験も2回したし
大学でもたいして危なげなしに単位を取得してすんなり卒業もしたし
だから、いわゆる「勉強」というのはそれなりにやったはずなのに
教科書に線を引きなさいと言われたら素直に引いてきたと思うのに
どうしてでしょう!
正直に告白するけど、
文章を読むのに線を引いたり重要語句を囲ったりすることで
どのように塊を分解でき、筋道が目に見えて、のみこめるようにできるのかを
この日まで、知らなかった。
革命でした。

あきれる人が多そうだ。
そんなかよ、阿藤智恵!
ええ、そんなでございました。
やってみたら驚くほど明々白々なことでしたが
ほんとに気づいていなかった。
まあ、よくこれまでやってこれたもんです。
いくつになっても、人間、勉強ですな。

というわけで2013年10月18日は革命に火がついた日で、
わたしはその新聞記事を大事に大事にとっておこうと思っているのだけれど
実際、本のページに線を引くまでには、それからまだ、数日を要したのであった……。

(かくして、このお話はしつこくつづく……)
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by atohchie | 2013-12-11 15:52 | 水曜日は本の話


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