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あまのじゃくの理由(3)【カート・ヴォネガットの本】

さて水曜日は本の話。

これは私の記憶の中の、本の話です。
昨日読んだ本でさえ、思い出して語ろうとすると筋はごちゃごちゃ、
他の本と混じったり、存在しないエピソードが紛れ込んだり、
まったく正確ではないことが多いのですけれど、
この日記ではあえて、読み直して確認したりせずに、
間違っているかもしれないことを書きます。勝手な本の話です。


学生時代、出会った本の話をするなら、
ほんとうは、この人が一番、の、ヴォネガット。
誰をさしおいても、別格で一番、なのが、ヴォネガット。
人格の芯の芯まで、この人はしみ込んでしまっていて
前にも書いたけど(こちらの日記です)
わたしのなかのどの部分がヴォネガットに影響されているか、なんて、
いちいち今さら指摘するのは不可能なんだ。



『しあわせな男』という芝居を書いて、
「あなたの作品は、【メタシアター】というものです」と
教えてもらうまで、わたしはそのことを知らなかったのだが
そう言われてみたら、わたしの作品はどれもすべてがメタシアトリカルで
たぶん、わたしは世界というものをそのように捕えるしかできなくて
たぶん、それはヴォネガットのせい。

いや、そうじゃなくて、もともとそのように世界を見る癖があったところに
ヴォネガットを知ったのかもしれない。

読むものに関して、わたしの師匠は長らくすぐ上の姉だったけれど
少しだけ、二人の好みが一致しないものがあった。
物理が大の苦手だったわたしは、SFを読めなかったし
わたしの好きなたいていの文学を好きになってくれる彼女が、
ヴォネガットだけは、受け付けなかった。
ヴォネガットって、SFの人ってことになってるのに。
彼女にとって、世界はわたしが見るような構造をしてはいなかったからなんだろう。

ともかく、わたしにとってヴォネガットは全ての作家のなかで別格で
そのことばはすべてが智恵の教えで、
もう、ほとんど聖書のように、あがめている。
全ては読み切れず、全ては理解できないところもまた、聖書のよう。

好きな作家はたくさんいるけれど、
もしもどうしても一人だけ選べと言われたら
どれほど心が引きちぎられそうに痛んでも
迷わずに、彼を選ぶだろう。

それほどまでにわたしが愛する彼の多くの教えのなかで、
いちばん奥が深い、これだけでいいと思えることばを、皆さんにおわけします。

“And I urge you to please notice when you are happy, and exclaim or murmur or think at some point, 'If this isn't nice, I don't know what is.”
幸せな時には、幸せなんだなと気づいてほしい。叫ぶなり、つぶやくなり、考えるなりしてほしい。「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」と。(『国のない男』金原瑞人=訳 NHK出版)


ずっとずっと、実践しようとしていて
実際にずっと、実践してきているけど
年を経るごとに、上には上があると気づかされるこの教え。
毎日、何度でも、叫んだり、つぶやいたり、考えましょう。
さあ、ご一緒に。
これがしあわせでなきゃ、いったいなにがしあわせだっていうんだ!

この世は絶望的だけど、それはもう、間違いなくひどいけど、
だからこそ同じくらい強く断言できる。
この世は美しい。この世は笑える。この世はしあわせに満ちている!と。

  ◆          ◆

ハイホー。

  ◆          ◆

彼がなくなって、もう、6年になる。(その日の日記はこちら)
彼がいない世界で、それでもわたしは生きています。
毎日、悲しいけれど、同時に、とても、とてもしあわせです。

お話ライブのこぼれ話、始めました。
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by atohchie | 2013-07-24 14:20 | 水曜日は本の話


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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