架空・お悩み相談室98『節目って何ですか』

【お悩み】
節目って何ですか。

単純に言うと、昨日と今日の違いなんです、分からないのは。いわゆる「節目の日」が昨日や明日とどう違うかなんです。

「本日、我が社は創立70周年を迎えました」と、いつもは休みになる創立記念日が記念行事をやるとかで休みにならないなんていうのが典型的な例です。いや、別に休みにならないからって恨んでるわけではありませんけどね。

その日と他の日に何か大きな違いがあるわけではないはずなんです。わが社の社員以外には、普段どおりの一日が過ぎていくんですから。
でも、あたかも特別な一日のように大騒ぎしたり、厳めしい式典をしたりすると、なぜかその日が特別みたいな気持ちになるから不思議です。

(愛しい人の命日なんて、明らかに昨日や明日とは違うとように感じると思います。でも、このあたりは喜寿とか米寿とかをお祝いするのと同じで、命に関わることですから、ちょっと横においておきます。)

つまり、節目の日ってなんですかってことです。十進法でなければ、70年目が節目の日にはならなかったかもしれません。なのに、70周年の今日は特別の日になってます。

この仕組みは一体どうなっているのでしょう。

(新潟県/えちごのいちごさんのお悩み)

【お答え】
トムは考えた。なんだって今日は、やたらと忙しく、働かされているんだろう。いつもならトムの水曜日は他の平日の曜日と同じように、のんびりと働いて、朝、少し忙しい時間帯があるほかはずっとゆったりしていて、急に慌ただしく働かされることなんかない。今日は水曜日のはずなのに、やたらと忙しい。いったいこれは、なんなんだろうか。

デイジーはしあわせだった。デイジーには嫌いな人がいっぱいいる。まず、見知らぬ赤の他人は絶対に好きになれないから、混んだ電車でぎゅーぎゅー詰めになる時なんか、死ぬんじゃないかと思うし、会社の上司にも一人、ものすごく苦手な人がいる。デスクから目を上げるとどうしても視界に入ってしまうアイツの顔を、どういうわけか今日は水曜日なのに見なくていいらしいし、混んだ電車にも乗っていない。素敵な顔をずっと見ている。

マックスは耐えていた。やれと言われたことを黙々とやる性分だから、さっきからそのとおりにしてはいる。けど今日は水曜日じゃなかったんだろうか。祝日でもなかったはずだ。それなのにいつものとおり駅に出かけないのはなぜだ。まったく知らない靴をはかされて、まったく知らない道を歩いている。この靴が窮屈でたまらない。隣を歩いているハイヒールがぶつかってくるのが気に入らない。

ベティは混乱していた。あたしはあんまり、不測の事態というのが好きじゃない。あんまり、というか、全然好きじゃない。水曜日はだいたいにおいて平和だから好きなのに、なんだかさっきから、予期していないことばっかりだ。心臓はばくばく言うし、目はとろんとろんするし、足は痛い。なんだか奇妙な化学物質が出ているようで、ぐるぐる回っているのが気持ち悪い。いったい今日はどうしたんだろう。

会社員のエス氏は、有給休暇をとった。1年前から付き合い始めた恋人との、今日は記念日なのだった。他の誰にとってもなんの変哲もない水曜日だが、二人にとっては大事な節目の日だ。エス氏ははりきって身支度を整え、素敵な街へ出かけたのだ。少しあたりをぶらついたあと、雰囲気の良いレストランを予約してある。今日こそ、彼女にプロポーズするつもりのエス氏は、胸の動悸を抑えることができずにいる。

エス氏の心臓であるトムは、やたらと忙しく、エス氏の瞳のベティはごきげんで、エス氏の足のマックスは痛みに耐えていて、脳のベティは混乱している。エス氏が勝手に決めた節目の日は、エス氏の身体たちにとっては何の意味もない。勝手によろこぶものがあれば、不満をおさえかねるものもあり、黙々と耐えるものがあれば、反乱をおこすものもいる。どちらかというとエス氏の身体は、急にやってきたこの節目の日を歓迎してはいないようだが、エス氏は文句なし、幸せである。

人にとって、身体の各部が思っていることは、なんでもないのと同様に、会社にとっても、会社員の一人ひとりが思っていることは、なんでもないことであります。人にとって人の命にかかわる節目の日が大切なように、会社にとっても、やはり会社の命にかかわる節目の日は大切なのです。節目の日に体の各部を休ませることと、節目の日にそれらを妙に働かせることは、どちらも、節目の日を大切にするという意味において、ひとしいことなのです。
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by atohchie | 2003-04-01 06:53 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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