架空・お悩み相談室89『ようちえんに かいじゅうが います』

【お悩み】
あんとん せんせい。ぼくの ようちえんの にかいの いちばん おくに かいじゅうが すんでます。ねんちょうさんが いってます。ぼくは かいじゅうが こわいので、いっかいに いても こわいので ようちえんに いきたくないです。どうすれば いいですか。こわいです。(あるはんげりすく県/あれくれい・すゔぉーりんさんのお悩み)

【お答え】
ほんのすこーし むかしの はなし。
ななつの やまと みっつの かわを こえて たかく けわしい だんがいぜっぺきを のぼった うえに ちいさな むらが あった。だんがいの むらには たくましく かしこくて やさしく はたらきもので おそれをしらず がまんづよい ひとびとが くらしていた。きびしい くらしだったが くらしに ひつような ものは たった ひとつを のぞいて なんでも やまから とってくることが できた。どうしても てにはいらない たった ひとつの ものとは しお だった。しおは どうしても くらしに かかせない。だんがいの むらびとたちは いちねんに いっかい とくべつに たくましく かしこく ゆうかんな わかものたちで きゃらばんを くんで たかく けわしい だんがいぜっぺきを くだり みっつの かわを こえ ななつの やまを こえて うみの ほとりの むらまで しおを かいに いった。いちねんを かけて ていねいに こしらえた すてきに あたたかい けがわの ぼうしや くつ うつくしい やまどりの はねかざり ほしにくや このみ うみの ほとりの むらでは てにはいらない そうした しなじなを だいじに はこんで きちょうな しおと こうかんして もらうのだ。わかものたちは じぶんで こしらえた とくべつな かざりや ちょっきを かいがらの ねっくれすや うでわ なんかと とりかえて つまや こいびとに もってかえったりも する。むらで まつ としよりや こどもや つまや こいびとたちは きゃらばんたいの いのちがけの たびが ぶじに おわることを ひたすらに ねがって るすを まもる。
そのとしも きゃらばんたいは うみの ほとりの むらへ げしの あさまでに たどりつけるよう はるの おわりに むらを でた。
たいそう きけんな めにあって なんにんかは けがも して それでも なんとか ぜんいんで たかく けわしい だんがいぜっぺきを くだり みっつの かわを こえ ななつの やまを こえて うみの ほとりの むらのそばまで やってきた そのとき むこうから いきせききって はしってくる おとこが いる。げしまで あと みっか よあけは はやい。その はやい よあけの あかつきの ひかりの なかを はしってきた おとこが きゃらばんたいに ちかづくと あせだくの かおは あかぐろく こわばって きものは ぼろぼろ ところどころに あかいものが にじんでいる。けがを しているのかと たずねる きゃらばんの わかものの てを ふりはらうようにして おとこは こういった。「うみの ほとりの むらへ いっては いけない。おそろしい かいじゅうが むらびとたちを おそっている。おうさまの へいたいが むかっているところだ。きっと かいじゅうは へいたいたちに やっつけられるだろう。いまは このあたりに やえいして あんぜんになるのを まちなさい。いつかも すれば かたが つくだろう。わたしは このまま にげていく。」
きゃらばんたいの わかものたちは はなしあった。むらびとたちを たすけに いこうと いうもの。ぶきを もたない おれたちに なにが できるものか  ここで まっていようと いうもの。なかなか はなしは きまらなかったが やがて むらおさの むすこが おもい くちを ひらいた。ながらく せわになった むらびとたちを みすてるようで つらいけれども おれたちは どうしても みなが まっている だんがいの むらに ぶじに かえらねば ならん。ここに いよう。
たびの しょくりょうは そこを つきかけている。わかものたちは つかれ はらをすかせ いっこくも はやく うみのほとりの むらへ いきたかった。しかし むらで まっている いとしい ひとたちを おもえば いのちを そまつに することは できなかった。わかものたちは うりものの ほしにくや このみを ほんのすこしずつ わけあって ただ ただ ねそべって しずかに すごした。だれも もんくを いわなかった。
げしがすぎて みっかがたって きゃらばんたいは しゅっぱつした。みな くちを むすんだまま いそいで うみのほとりを めざした。むらが ちかづいて わかものたちは おどろいた。すれちがう ものたちが まあたらしい けがわの ちょっきや はねかざりの ついた しゃれた ぼうしを みにつけ なんとなく うかれているようだ。わかものたちは ますます みちを いそいだ。
うみの ほとりの むらで わかものたちは がくぜんとした。しんせつに むかえてくれた むらおさが こういったのだ。
「げしがちかづいても あんたたちが こないので どうしたことだろうと あんじていたら しらない やまの たみが やってきて だんがいの むらの きゃらばんは ことしは こないと いったのだ。なんでも かいじゅうが やってきて みちを はばんだので だんがいの きゃらばんは やまを おりられないのだと。そんなことが あるものかと わたしたちは いったんだよ。だから げしが すぎるまでは ずっと まっていた。しかし きのう とうとう あきらめて しらない やまの たみと しおを こうかんしてしまったのだ。あんたたちには ほんとうに すまないことをした。しかし あえてよかった。ぶじで よかった」
なみだを うかべて よろこんでくれる うみの ほとりの むらびとたちに わかものは ちからなく れいをいい ほんの すこしでも しおを わけてくれないかと たのんだが むらびとたちは まゆを ひそめ もうしわけないが わけてあげられるのは こればかりだと ちいさな ふくろを さしだした だけだった。
これっぽっちの しおでは とうてい だんがいの むらびとたちが いちねんを いきぬくには たりない。わかものたちは いったことのない べつの むらを たずねることにした。
うみの ほとりの むらびとたちに しんせつに しょくりょうを わけてもらい うみぞいの みちを ていねいに おしえてもらって わかものたちは しゅっぱつした。
うみぞいの みちは へいたんだったが なつの たいようが てりつけて それは それは くるしかった。みずは たくさん あるのに しょっぱくて のめないことも つらかった。それでも わかものたちは けんめいに あるいた。
もうひとつの うみの ほとりの むらのそばまで やってきた そのとき、むこうの ほうから いきせききって はしってくる おとこが いる。げしを すぎて まもなく ひのいりは おそい。その おそい ゆうぐれの ひかりの なかを はしってきた おとこが きゃらばんたいに ちかづくと あせだくの かおは あかぐろく こわばって きものは ぼろぼろ ところどころに あかいものが にじんでいる。けがを しているのかと たずねる きゃらばんの わかものの てを ふりはらうようにして おとこは こういった。「うみの ほとりの むらへ いっては いけない。おそろしい かいじゅうが むらびとたちを おそっている。おうさまの へいたいが むかっているところだ。きっと かいじゅうは へいたいたちに やっつけられるだろう。いまは このあたりに やえいして あんぜんになるのを まちなさい。いつかも すれば かたが つくだろう。わたしは このまま にげていく。」
きゃらばんたいの わかものたちは かおを みあわせた。だれも ひとことも いわなくても きもちは ひとつだった。わかものたちは そのまま みちを いそぎ そして かいじゅうたちに くわれて みな しんだ。
だんがいの むらびとたちは わかものたちの さいごを しることも ないままに いつのまにか へっていき やがて ひとりのこらず いなくなって しまったそうだ。
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by atohchie | 2003-04-01 05:58 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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