架空・お悩み相談室88『待ち合わせしたら、どれくらい待てばいいでしょう?』
【お悩み】
人と待ち合わせしたら、いったいどれくらい待てばよいでしょう?
携帯という便利なものができても、連絡がつかない場合、どうすればよいでしょう? (兵庫県/あめりさんのお悩み)
【お答え】
あなたは約束の時間の10分か、もしかすると15分前にはその場所に立って、辺りを見回します。このような質問をされる方は、待ち合わせの少し前には現地に到着しているものです。相手が少し早く来るかもしれないと考え、待たせたくないと思うからです。この日はどうやらこちらが先だったようです。よかった。胸をなでおろし、しかし念のため、着信があればすぐ気づくよう携帯電話を握りしめ、落ち着いて待てる場所を探します。あの人がやって来そうな方向に、ときどき首をめぐらせながら、あなたはバッグの中の書類や手帳や、文庫本などを取り出して、時間をつぶします。その間、4回は手に持った携帯電話で時間を確かめます。約束の2時がきました。あの人は来ません。あなたは、メールを送ってみようかと考えます。いやいや、約束を忘れているはずはないし、待ち合わせはいつもここだもの、間違えるはずもない。落ち着いて待とう。書類に目を落としますがどうも集中できません。3行読まないうちに、あなたの目はまたも相手の来そうな方向へさまよい出します。少し首をのばすようにして、向こうの方を見やってもみます。デジタル表示は14:03。3分やそこらでイラつくなんて、とんでもない。あなたは自分がそのような狭量な人間であるとは思いたくありません。それからしばらく、その繰り返し。15分が過ぎる辺りで、あなたはなんだか非常に残念になってきます。わたし、ここにもう、30分も立ってるじゃないの。同じ場所で待ち合わせをしていた人たちは、どんどん交替して、最初とは全く違う顔ぶれです。皆、携帯電話を手にしています。既にあなたは10分経過したときに相手にメールを打っています。それから少しして電話もしてみました。どうやら圏外のよう。地下にいるのでしょうか。あるいは電池切れ?そうするうちにあなたはさっぱり集中できない自分が嫌になって、手にしていた書類をバッグの中にしまいこみました。急ぎの仕事があるのです。そろそろ小一時間を、あなたは無駄に立ったまま過ごしています。昨夜もあまり眠れていなくて、立っていること自体が楽ではないのです。こんなに時間があるのなら、どこかに座ってコーヒーでも飲みながら、仕事を片づけてしまえばよかった。けれども約束は確かに今日の2時。いったいわたし、何やってるんだろう?なんだか悲しくなってきます。
待つという行為は、一瞬一瞬が葛藤と苦しみの連続です。相手への不信、自分への不信が、一瞬ごとに襲ってきます。待つ人はみな、そうした恐ろしい悪夢のような力と精一杯に闘いながら、待つのです。
そこでどれほど長く待てるかは、あなた自身の心の中の、信頼の強さにかかってきます。
待ち合わせの相手に待たされた時、どれくらい待ったら良いのか?という質問は、したがって、次のように言いかえることができます。
人は、自分自身を、どれくらい強く信じられたらよいのでしょう。
自らに問いかけてみれば、答えは簡単ではないでしょうか?
人と待ち合わせしたら、いったいどれくらい待てばよいでしょう?
携帯という便利なものができても、連絡がつかない場合、どうすればよいでしょう? (兵庫県/あめりさんのお悩み)
【お答え】
あなたは約束の時間の10分か、もしかすると15分前にはその場所に立って、辺りを見回します。このような質問をされる方は、待ち合わせの少し前には現地に到着しているものです。相手が少し早く来るかもしれないと考え、待たせたくないと思うからです。この日はどうやらこちらが先だったようです。よかった。胸をなでおろし、しかし念のため、着信があればすぐ気づくよう携帯電話を握りしめ、落ち着いて待てる場所を探します。あの人がやって来そうな方向に、ときどき首をめぐらせながら、あなたはバッグの中の書類や手帳や、文庫本などを取り出して、時間をつぶします。その間、4回は手に持った携帯電話で時間を確かめます。約束の2時がきました。あの人は来ません。あなたは、メールを送ってみようかと考えます。いやいや、約束を忘れているはずはないし、待ち合わせはいつもここだもの、間違えるはずもない。落ち着いて待とう。書類に目を落としますがどうも集中できません。3行読まないうちに、あなたの目はまたも相手の来そうな方向へさまよい出します。少し首をのばすようにして、向こうの方を見やってもみます。デジタル表示は14:03。3分やそこらでイラつくなんて、とんでもない。あなたは自分がそのような狭量な人間であるとは思いたくありません。それからしばらく、その繰り返し。15分が過ぎる辺りで、あなたはなんだか非常に残念になってきます。わたし、ここにもう、30分も立ってるじゃないの。同じ場所で待ち合わせをしていた人たちは、どんどん交替して、最初とは全く違う顔ぶれです。皆、携帯電話を手にしています。既にあなたは10分経過したときに相手にメールを打っています。それから少しして電話もしてみました。どうやら圏外のよう。地下にいるのでしょうか。あるいは電池切れ?そうするうちにあなたはさっぱり集中できない自分が嫌になって、手にしていた書類をバッグの中にしまいこみました。急ぎの仕事があるのです。そろそろ小一時間を、あなたは無駄に立ったまま過ごしています。昨夜もあまり眠れていなくて、立っていること自体が楽ではないのです。こんなに時間があるのなら、どこかに座ってコーヒーでも飲みながら、仕事を片づけてしまえばよかった。けれども約束は確かに今日の2時。いったいわたし、何やってるんだろう?なんだか悲しくなってきます。
待つという行為は、一瞬一瞬が葛藤と苦しみの連続です。相手への不信、自分への不信が、一瞬ごとに襲ってきます。待つ人はみな、そうした恐ろしい悪夢のような力と精一杯に闘いながら、待つのです。
そこでどれほど長く待てるかは、あなた自身の心の中の、信頼の強さにかかってきます。
待ち合わせの相手に待たされた時、どれくらい待ったら良いのか?という質問は、したがって、次のように言いかえることができます。
人は、自分自身を、どれくらい強く信じられたらよいのでしょう。
自らに問いかけてみれば、答えは簡単ではないでしょうか?
by atohchie
| 2003-04-01 05:49
| 缶詰製作中(書斎より)
阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。
by atohchie
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●阿藤智恵サイトを更新しました更新日:2013年12月31日(火)
◆これからの阿藤智恵◆
1月19日
「第3回JAZZ&お話ライブ」
1月23日
「どこそら会」
3月8・9日
「『えんげき』のじゆうじかん」の
小さなお芝居の会と「ちえよむ会」
●戯曲集『十六夜の月』を出版しました。
ご購入は阿藤智恵への直接注文または書店にてご注文ください。また、ネット書店でも購入できます。
●受賞しました。
加藤健一事務所vol.83 「シュぺリオール・ドーナツ」
念願の翻訳デビュー、果たしました!
→本作品で、第5回小田島雄志・翻訳戯曲賞をいただきました。加藤健一さん、演出の大杉祐さんはじめ公演座組の皆さん、また、翻訳作業にお力添えを下さった多くの方々に、心から感謝します。
●戯曲『死んだ女』が雑誌【テアトロ】2013年1月号に掲載されました。
★『どこまでも続く空のむこうに』の劇評をいただきました!!大変な力作です。ぜひご一読ください。2012.4.19
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●戯曲『どこまでも続く空のむこうに』が雑誌【テアトロ】2012年4月号に掲載されました。
●小説『マチゾウ』で同人誌【突き抜け4】に参加しました。
ご購入はこちらへ(「阿藤サイトから」と一言お書き添えくださいませ)。
★『曼珠沙華』の劇評をいただきました!!
ぜひご一読ください。2011.10.26
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●公演終了しました。
Pカンパニー番外公演その弐「岸田國士的なるものをめぐって~3人の作家による新作短編集~」竹本譲さん、石原燃さんと、短編を1本ずつ書きました。私の作品タイトルは『曼珠沙華』です。
★雑誌『テアトロ』10月号に三本そろって掲載されています。
●連載エッセイ「本日も行ったり来たり~トハナニカ日記~」
雑誌【テアトロ】2012年1月号に最終回が掲載されています。
●日記のお題、ください!
阿藤への質問、お悩み相談、どのようなことでもどうぞ。心こめて書かせていただきます。
お題は阿藤へのメール、または、日記へのコメント(どの記事につけてくださってもOKです)でどうぞ。
●戯曲『十六夜の月』が雑誌【テアトロ】2011年7月号に掲載されました。
●小説『ツヅキ2011』で同人誌【突き抜け3】に参加しました。
ご購入はこちらのフォームへ(「阿藤のブログから」と一言お書き添えくださいませ)。
●戯曲『バス停のカモメ』が雑誌【テアトロ】2010年1月号に掲載されました。
●戯曲『しあわせな男』が雑誌【テアトロ】2008年10月号に掲載されました。
●石井ゆかりさんの
「石井NP日記」で
インタビューを受けました。
こちらの
「ロードムービー・その1」で5番目にインタビューされています。
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