架空・お悩み相談室76『ネコがうるさい』

【お悩み】
ネコがうるさいです。真冬なのにうるさいネコがいっぱいです。
明朝は道路の凍結に注意という天気予報なのに、いまも庭先でうるさく鳴いてます。

春先なら雨戸を開け放って出ていっていただきますが、お布団から這い出る気もしないほど寒いので、もんもんとしています。

どうしたら、庭にうるさいネコが来なくなるでしょう(大阪府/寒がりのねずみさんのお悩み)

【お答え】
お悩みをいただいたのはまだ寒い時期でしたが、このごろは少しあたたかくなって、雨戸を開けることができるようになったのではないでしょうか?
お答えが遅くなったのは、この季節を待っていたからです。

暑さ寒さも彼岸までという言葉がありますように、立春を過ぎて、啓蟄を越えて、春分が来るまでは、まるで真冬のような寒さが訪れることがあります。3月になって大雪が降ることもあります。
しかし、やはり、世は春です。何を根拠にそのようなことをいうかと申しますと、ネコが鳴いているのがそれなのです。と、申しますか、ネコが声をはりあげ始めることをもって、「はる」となす、ということが、そもそもの初めに定められたのが、「こよみ」のまさに起源であるからなのです。
「こよみ」という言葉は、古くは「ねこよみ」と言いました。ほかならぬネコが、暦のよってたつ根拠であるということが、そこからもわかります。

世界の多くの民族は、穀物を食します。ある程度温暖で、水に恵まれた土地では、穀物が栽培できるからです。人間は狩猟と採集によっても生命を維持することができますが、それでは大いに子をなし、数を増やすことは難しいとされています。穀物が栽培できるのに、それをせずに狩猟と採集のみによって繁栄した民族はありません。
穀物を栽培することによって、人間は定住を始め、時間のかかる子育てを集団でなし、大いに栄えることができました。穀物の栽培により、原始的なムラが誕生し、ムラ同士の交流が行われ、ときには勢力争いも起こり、人間のあらゆる文化が育っていきました。ムラの勢力を決めるのは、貯蔵された穀物の量でした。大きな倉をもち、余剰の穀物をたくわえたムラは、その分だけ大きな力を持ち、周囲のムラを従えていきました。

ムラを強く、大きくするためには、穀物の生産量を上げ、貯蔵の穀物を長期保管することが必要でした。この二つの重要きわまる課題を、一度に解決してくれるのが、そうです、ネコの存在だったのです。ネコは暦のもととなり、穀物倉のネズミ獲りとして働きました。
鋭敏なネコを備えたムラこそが地域の長となっていきました。
ネズミの事は説明するまでもなくおわかりでしょうから、暦のほうを少しだけご説明いたしましょう。

穀物の生産量を上げるために最も大切なことは、今も昔も、天候を知ることです。水道もなく温室もなく、化学肥料もない昔であれば、天候を予知することは、ほとんど唯一の手段だったと言っても過言ではありません。ご存知のように春は気まぐれな季節、空を見ても風を感じても、明日の天気はわかっても3ヶ月後は読めません。そこで登場したのがネコだったのです。

ご存知のようにネコは基本的にわがままで、怠惰な生き物です。怠惰はすなわち合理主義のもとです。ネコは必要なことしかしません。最小限の労力で最大の効果をあげるべく、最適な時期に求愛活動を始めます。たとえば身重の体で雪の中を獲物を探して歩くのは効率が悪いですね。ちょうど、ばかな蛙たちが道端に飛び出してくる頃にもっとも大変な子育て期を合わせるために、ネコはどのように計算をするのでしょうか、田植えに最適の日まで108日という日に声をはりあげ始めるのです。
108日という日数は、田植えの準備を始めるには長すぎず短すぎず、まことに都合のいい時間でありました。そこで、ネコの盛りの第一声をもって、暦は始まる、すなわち、その日をもってはじまる季節を「春」となす、と定められたのです。

猫という漢字が「ケモノ偏に苗」と書くことも、そこからきています。

春になったから猫が鳴くのではないのです。
猫が鳴くから春なのです。

古来、春は早起きをし、春の仕事をすべき季節です。
眠りをむさぼる季節は終わりました。
周囲に猫をもたない哀れな民が多数を占めるようになってしまった現代社会において、鋭敏な猫がときを告げ知らせてくれるあなたは、まさに幸運というべきではないでしょうか。
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by atohchie | 2003-04-01 03:55 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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