架空・お悩み相談室73『-×-が+になる瞬間を見たい』

【お悩み】
先日、授業中に-1+-1=+2と言い張る学生に、とっさに-1×-1=+1の間違いだと指摘しましたが、後に自信がなくなってきました。そこでみたらし団子を思い描いてみました。団子が3個のくしにもう一つ団子を付けると、確かに+3+1=+4になりましたし、くしを3本並べると、確かに+3×+3=+9になりました。団子が一つずつないくしを2本並べると、確かに-1+-1=-2、「2個ない」になりましたし、くしだけになったのを3本並べると-3×3=-9になりました。ところが、-3×-3=+9になるのだけ、どうしても視覚化できません。考えれば考える程不思議です。これはいったいどういう現象なのでしょうか?(兵庫県/ATPさんのお悩み)

【お答え】
実に興味深い現象が起きています。
団子が3個のくしを「+3」だとして計算を始めたならば、中学校程度の数学的知識で単純に考えると、団子が一つ減ったくしは「+2」であり、団子のないくしは「0」になりそうなものですが、この計算ではそうはなりません。団子3つのくしから団子を3つ食べると「0」ではなくて「-3」。浅薄な数学では到底踏み込むことのできないこの大きな「3」の差、消えた「3」の謎こそ、人間の持つ欲望と喜びの全てをあらわしているものに他ならないでしょう。
人間にとって、「くし」と、「今の今までそこに3つの団子が刺さっていたくし」とは明らかに異なるものです。前者こそ「0」であり、後者はまごうかたなき「-3」です。人の眼には明らかな「団子のついていた跡」や、人の心に消すに消せない「このくしには団子が刺さっていてしかるべきだ」という思いなどは、低級な数学でははかり知ることはできず、結果、無視されることになるのですが、人の実生活において、人を動かすものはつまるところ、このような低級な数字ではあらわすことのできない数字と数字とのあわいに横溢するなにかであって、そして数学たるもの、本来のあるべき姿は、世間でおおいに誤解されているものとは全く異なる、実はこのようなあわいをこそ、対象としているのであります。数学と音楽がその頂点において、非常に近い、ほとんどわかちがたいひとつのものであるゆえんです。
そこで、ほんものの人の世をあらわす最高の数学を志す我々としては、中学程度の、かえってこの世をややこしく見せてしまう穴だらけの数学をあっさりと打ち捨てることにいたしましょう。そして、心の奥底に耳をすませ、遠い幻の旋律を聞きとるようにして、この空っぽの皿に乗せられた三本のくしを見つめることにいたしましょう。
私たちの心の数学において、「-3」とは、「3つの団子を食べられてしまったくし」でありました。それを、「×3」するとは、そのくしを、3本並べることですね。では、それを「×-3」するとはいかなることでしょう。良いですか。心の耳をすませましょう。ずばり、それは「3つの団子を3つのくしから食べてしまったことを、『なかったことにする』」ことであります。つまり、よそから新しい団子をもってきて、今、皿の上に乗っている「3つの団子がかつて刺さっていた跡のあるくし」に、3つずつ、刺すのです。じょうずに刺しましょう。3つのくしから3つずつの団子を食べられてしまった悲しみは、跡を残してしまえば消えることはありません。まったく跡形もなく「なかったことにする」のでなければ、「×-3」したことにはなりません。並べたくしの上には、あんをたっぷりかけましょう。
いかがです。皿の上には、3本のくしにおいしそうなみたらし団子が3つずつ。やはり答えは「+9」ですね。
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by atohchie | 2003-04-01 03:46 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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