架空・お悩み相談室68『髪が跳ねまくるのに困っています』

【お悩み】
髪が跳ねまくるのに困っています。しかし、髪質は至って健康。なのに困っているというのも、髪に対して失礼なのかもと思います。でも、跳ねたままでは髪型としてイマイチですし、一本にまとめるのも味気ない。いっそのこと、くるくるパーマをかけてしまうべきでしょうか。(東京都/正月明太子さんのお悩み)

【お答え】
しみじみと考えてみましょう。
およそいきとしいけるものの中で、人間のように身体の一部の毛が、際限もなく伸びて何メートルにもなるような動物はあるのでしょうか。
地上にふさふさと毛の生えた動物はあまたありますが、定期的に散髪をしないと暮らしていけないような獣は、寡聞にして私は存じておりません。
ひとの髪というものはいったいなんのためにこうもまあ際限もなく伸びるのでありましょうか。
そもそも頭部の毛というものは、生きるのに必須のものではありません。明らかに余剰であります。
世の中には頭部の毛なしにまったく健康に、完璧に美しく、なんの問題もなく生きているひとがいくらでもおります。
なぜ髪は生えているのか、なぜ伸びるのか。
私にはその答えはわかりません。
しかし、この、余剰そのものである髪が、人間にもたらす葛藤は、人間のもつあらゆる可能性を指し示しているような気がして仕方がないのです。
たとえば、朝のセットが決まって素敵に整った髪が、ほんの半日しかもたないことや、美容室で美しく切り揃えてもらった襟足、絶妙のバランスで顔をふちどる前髪が、ほんの10日もすればその美しさを失うこと。
私たちの生きるこの世界は、諸行無常、有為転変のはかない世です。
不変のもの、絶対のもの、確実なものがなにひとつないこの世だからこそ、私たちは愚かな生を繰り返し、過ちを嘆き、短い命を尊び、一期一会に至福をおぼえ、この一瞬一瞬を輝いて、生きていくことができるのではないでしょうか。
私は申し上げます。
跳ね跳ねスタイル、一本まとめ、くるくるパーマ、結構ではありませんか。
今日いちにちを、かけがえのない今日一日として生きる、その姿があなたの今日のヘアスタイルなのです。
それは、どのようなスタイルであっても今日というこの日、今というこの時にしか存在し得ない、あなた自身のスタイルなのです。
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by atohchie | 2003-04-01 02:31 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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