架空・お悩み相談室67『海馬と話をつける方法』

【お悩み】
それは寒風吹きすさぶ漆黒のある夜のことでした。羊と水鳥と綿と寝袋と犬と湯たんぽの熱気に包まれ、それはそれは甘美な眠りの奥底に落ち着いていたと思われる私は、丑三つ時に、突如、覚醒へと吹き飛ばされたのでございます。はて?なにによって私は目をさまさせられたのか?との問いを最後まで問う間もなく、「夕方の散歩のうんち(注:犬の)、処理した記録がない!」との叫びが聞こえて参りました。私には、このようなことは、直ちに起き上がって対処しないといけない一大事であるとは思えません。大寒波の夜の神聖なる眠りの最中に、いちいち大声で報告して人を叩き起こさないようにして欲しいのです。どのようにすれば海馬に言い聞かせることができるでしょうか?(兵庫県/ATPさんのお悩み)

【お答え】
人は太古の昔から、犬や鳥、牛や馬、ロバやラクダといった動物たちを飼い馴らし、自分たちの用事をさせたり、心の慰めにしたりして生きてきました。というか、少なくとも、人は、人がそうした動物たちを飼い馴らして望みどおり操っていると考えています。しかし、実際はどうでしょう。人の目ではなく、宇宙からまったく客観的な第三者の目で見たとき、そのようなことをいったい人間が想像すらできるものなのかどうかはさておき、せいぜいできるかぎりの力を振り絞って、想像してみることにいたしましょう。はたして、人とそうした「家畜」、いったいどちらがどちらを操って、好きなように動かしていると思いますか?
一頭の暴れ馬が、何人もの乗り手を振り落とし、蹴り飛ばし、噛みついて人々を困らせているところに、名人として名高いある人物がやってきて瞬く間に馬の気を静め、鞍も載せないその背中にまたがって、ゆっくりと辺りを歩かせたとしてみましょう。この場合、本当にその「名人」が馬に言うことを聞かせたといえるでしょうか?もしかすると、従順な乗り手というものがどのようにふるまうべきか、馬が彼または彼女を操って人々に示したという方が、客観的ではないでしょうか?
果たして人は、自由な生き物に何かを「言い聞かせる」ことなどできるのでしょうか? そのように躍起になって自分の望みを通そうとすることは、従順な乗り手として大人しく振る舞うことより、本当に賢明なことなのでしょうか?
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by atohchie | 2003-04-01 02:16 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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