架空・お悩み相談室65『靴下が片方だけなくなるのは何故?』

【お悩み】
洗濯するたびに靴下が片方だけなくなるのは何故ですか?
右のも左のも一緒に脱いだはずなのに。
絶対おかしいです!(宮崎県/よだきいさんのお悩み)

【お答え】
世の中には、二種類の人間がいます。
洗濯するたびに靴下の片方がなくなる人と、そうならない人です。
一般に、前者は「ずぼら」「だらしない」などと言われ、
後者は「几帳面」「きちんとしている」と言われます。
しかし、靴下が片方なくなるかどうかは、履く人の性格によるのではありません。
体質です。より正確には、足質です。
人は自分の身体を全部自分だと思っていますが
それはかなりおおざっぱで、乱暴なものの考え方です。
人はそう思っていても、身体の方ではいろんな考えを持っています。
靴下の片方をなくす人は、独立心旺盛な足質の人です。
独立心旺盛というのは、独立独歩と言い換えてもよろしい。
右足と、左足が、それぞれに独自の考えを持って暮しているのです。
ふだん歩いている時は、そうした人の足も、協力し合って動いているように見えますから
いかにも気があって、仲よしで、一体感があると思われがちですが
それは結果論に過ぎません。
靴下を片方なくす人の右足をと左足は、いつも独立独歩なのです。
たまたま行きたい方向が一致した時に、彼または彼女は歩けるのです。
人は、たとえば寒い季節にこたつに入っていて、
トイレに行きたいのになんだか立ち上がる気がしないというとき、
人のものぐさにその原因を求めますが
そうではありません。右足と左足の不調和が真の原因なのです。
そんな右足と左足が、その独立心をもっとも盛大に発揮する時こそ、
靴下を脱ぐときです。
一緒に脱いだはず、ですって?
そんなはずはありません。
あなたは決して、独立心旺盛な右足と左足の靴下を、同時に脱ぐことはできません。
もしもあなたが、靴下をなくさない人にめぐりあい、親しい仲になれたならば
――もっとも、人の足質は結果的に人の性格に大きな影響を及ぼすため
足質の違う人とはだいたいが、めぐり合うことすら難しいのです。
統計によれば独立独歩足の持ち主が、調和的足の持ち主と友だちになれる確率は
0.01%と言われており、ましてやその二人が旅館の同室に泊まったり、
一緒に銭湯に行ける仲になれる確率は天文学的に低いと言わざるをえませんが――
ぜがひでも靴下を脱ぐところを見せてもらってごらんなさい。
左右の靴下を一緒に脱ぐということは、こういうことであったのかと、
天地が震えるほどの感銘を受けることは間違いありません。
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by atohchie | 2003-04-01 02:01 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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