投票日を明日に控えて
毎日、新聞を読んで、インターネットを見て、周りの人の話を聞いて、選挙について考えて、それで、思ったことは、わたしたちの民主主義は、わたしたちは、まだ、まだ、赤ちゃんなんだろうってこと。
赤ん坊が元気に手足を振りまわしていて、自分のゲンコツが顔にあたってエーンと泣くように、人間たちは自分のふりあげた拳で自分を殴り、自分の落としたもので自分の足を傷つけて、泣いたり、怒ったり、ふくれたり、すねたり、憤ったりして生きている気がする。今、わたしのしたこの選択で、わたし自身でもあるところの、近くの遠くの明日の未来の誰かが傷ついて、悲しんで、怒って、打ちひしがれて、苦しむことが、わたしにはまだ、わからない。
でも、いつか、わかるときがくる。
そう、思う。
それまでは、精一杯に、生きていくしかない。
赤ん坊が、今、自分の手が自分自身だとわからないことを、憤っても泣いてもそれはしかたがない。わかるときがくれば、わかるのだ。
わたしに今、わかっていることは、わたしたちは精いっぱいに生きて、たくさんの愚かな決断と、たくさんの美しい決断を重ねて、重ねて、今日のこの民主主義にたどりついたということ。これはちっとも、完成していない。
理想には、ほどとおい。これからも、たくさんの愚かな決断と、たくさんの美しい決断を重ねて、わたしたちは、少しずつ、おとなになっていくのだろう。
選挙公約を並べてみて、眺めてみて、自由ということを考える。主権在民ということを、考える。これはちっとも、完成していない。完璧には、ほどとおい。けれども、こうやって、さまざまのことを主張することができるということ、その主張を目にすることができるということ、わたしのための投票用紙が用意されているということ、誰にも見られずに何でも書くことができるということ、わたしの一票を、誰かが確かに数えてくれると信じられるということ、どうやら現在の世の中で少数派に属するらしいわたしが、こうしてそもそも生きていられるということ、考えをことばにできるということ、戦争はいやだと泣けること、福島を思い続けると誓えること、いのちといのちの仕事を守りたいと叫べるということ。そうしたひとつひとつを、簡単に、奪ってしまえる権力ということ。考えが違う人の、その考えを、目にすることができるということ自体が、なにかの達成であるということ。わたしは、わたしが、明日、投票に行けるということが、どれほどの大きな成果であるかを思うのです。
どこにもない理想と比べて、減点をかさねていたら現実に幻滅するのは当たり前。
そんな当たり前のことに気がつくのに、ずいぶんと時間がかかってしまったけれど、少なくとも明日、投票所に向かう足取りは、きっと軽いでしょう。だって、わたし、投票ができるのだもの。なんてすごい。なんて、素晴らしい。遠くの近くの昔のどこかのわたしに、教えてあげたい。なんでもない女のわたしが、胸を張って投票所に行ける、そんな時代がほんとにあるんだよってね。
赤ん坊が元気に手足を振りまわしていて、自分のゲンコツが顔にあたってエーンと泣くように、人間たちは自分のふりあげた拳で自分を殴り、自分の落としたもので自分の足を傷つけて、泣いたり、怒ったり、ふくれたり、すねたり、憤ったりして生きている気がする。今、わたしのしたこの選択で、わたし自身でもあるところの、近くの遠くの明日の未来の誰かが傷ついて、悲しんで、怒って、打ちひしがれて、苦しむことが、わたしにはまだ、わからない。
でも、いつか、わかるときがくる。
そう、思う。
それまでは、精一杯に、生きていくしかない。
赤ん坊が、今、自分の手が自分自身だとわからないことを、憤っても泣いてもそれはしかたがない。わかるときがくれば、わかるのだ。
わたしに今、わかっていることは、わたしたちは精いっぱいに生きて、たくさんの愚かな決断と、たくさんの美しい決断を重ねて、重ねて、今日のこの民主主義にたどりついたということ。これはちっとも、完成していない。
理想には、ほどとおい。これからも、たくさんの愚かな決断と、たくさんの美しい決断を重ねて、わたしたちは、少しずつ、おとなになっていくのだろう。
選挙公約を並べてみて、眺めてみて、自由ということを考える。主権在民ということを、考える。これはちっとも、完成していない。完璧には、ほどとおい。けれども、こうやって、さまざまのことを主張することができるということ、その主張を目にすることができるということ、わたしのための投票用紙が用意されているということ、誰にも見られずに何でも書くことができるということ、わたしの一票を、誰かが確かに数えてくれると信じられるということ、どうやら現在の世の中で少数派に属するらしいわたしが、こうしてそもそも生きていられるということ、考えをことばにできるということ、戦争はいやだと泣けること、福島を思い続けると誓えること、いのちといのちの仕事を守りたいと叫べるということ。そうしたひとつひとつを、簡単に、奪ってしまえる権力ということ。考えが違う人の、その考えを、目にすることができるということ自体が、なにかの達成であるということ。わたしは、わたしが、明日、投票に行けるということが、どれほどの大きな成果であるかを思うのです。
どこにもない理想と比べて、減点をかさねていたら現実に幻滅するのは当たり前。
そんな当たり前のことに気がつくのに、ずいぶんと時間がかかってしまったけれど、少なくとも明日、投票所に向かう足取りは、きっと軽いでしょう。だって、わたし、投票ができるのだもの。なんてすごい。なんて、素晴らしい。遠くの近くの昔のどこかのわたしに、教えてあげたい。なんでもない女のわたしが、胸を張って投票所に行ける、そんな時代がほんとにあるんだよってね。
本日の【ほらふき道場】
by atohchie
| 2012-12-15 22:41
| きもち/ココロ/げんき
阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。
by atohchie
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阿藤智恵NEWS
●脱原発世界会議に賛同します。安心できる明日を子どもたちに。
●阿藤智恵サイトを更新しました更新日:2013年12月31日(火)
◆これからの阿藤智恵◆
1月19日
「第3回JAZZ&お話ライブ」
1月23日
「どこそら会」
3月8・9日
「『えんげき』のじゆうじかん」の
小さなお芝居の会と「ちえよむ会」
●戯曲集『十六夜の月』を出版しました。
ご購入は阿藤智恵への直接注文または書店にてご注文ください。また、ネット書店でも購入できます。
●受賞しました。
加藤健一事務所vol.83 「シュぺリオール・ドーナツ」
念願の翻訳デビュー、果たしました!
→本作品で、第5回小田島雄志・翻訳戯曲賞をいただきました。加藤健一さん、演出の大杉祐さんはじめ公演座組の皆さん、また、翻訳作業にお力添えを下さった多くの方々に、心から感謝します。
●戯曲『死んだ女』が雑誌【テアトロ】2013年1月号に掲載されました。
★『どこまでも続く空のむこうに』の劇評をいただきました!!大変な力作です。ぜひご一読ください。2012.4.19
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●戯曲『どこまでも続く空のむこうに』が雑誌【テアトロ】2012年4月号に掲載されました。
●小説『マチゾウ』で同人誌【突き抜け4】に参加しました。
ご購入はこちらへ(「阿藤サイトから」と一言お書き添えくださいませ)。
★『曼珠沙華』の劇評をいただきました!!
ぜひご一読ください。2011.10.26
こちらをクリック=
劇評サイトWonderland
●公演終了しました。
Pカンパニー番外公演その弐「岸田國士的なるものをめぐって~3人の作家による新作短編集~」竹本譲さん、石原燃さんと、短編を1本ずつ書きました。私の作品タイトルは『曼珠沙華』です。
★雑誌『テアトロ』10月号に三本そろって掲載されています。
●連載エッセイ「本日も行ったり来たり~トハナニカ日記~」
雑誌【テアトロ】2012年1月号に最終回が掲載されています。
●日記のお題、ください!
阿藤への質問、お悩み相談、どのようなことでもどうぞ。心こめて書かせていただきます。
お題は阿藤へのメール、または、日記へのコメント(どの記事につけてくださってもOKです)でどうぞ。
●戯曲『十六夜の月』が雑誌【テアトロ】2011年7月号に掲載されました。
●小説『ツヅキ2011』で同人誌【突き抜け3】に参加しました。
ご購入はこちらのフォームへ(「阿藤のブログから」と一言お書き添えくださいませ)。
●戯曲『バス停のカモメ』が雑誌【テアトロ】2010年1月号に掲載されました。
●戯曲『しあわせな男』が雑誌【テアトロ】2008年10月号に掲載されました。
●石井ゆかりさんの
「石井NP日記」で
インタビューを受けました。
こちらの
「ロードムービー・その1」で5番目にインタビューされています。
●阿藤智恵サイトを更新しました更新日:2013年12月31日(火)
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