架空・お悩み相談室63『ふとんの間違った側から起きた時は?』

【お悩み】
あれはメアリーポピンズだったと思うのですが、朝起きるときに「ベッドの反対側」から起きたらいろいろ間違ったことが起こるって言うじゃないですか。あれって、もちろん我が国古来の畳にお布団という生活様式にも適応される普遍の法則ですよね?

それで質問なんですが、朝、あ~これは間違った側から起きてしまったな、って自覚したときに、急いでお布団に戻り、しばしうたたねして(それが無理ならタヌキ寝入りして)、やおら起き出せば、「間違ってない側」から起き直すことってできますか?(大阪府/マイケルさんのお悩み)

【お答え】
ええ、もちろんあてはまります。
畳にお布団の場合に、「間違った側から起きると朝からうまくいかない」という言い伝えがないのは、お布団民族特有の気質によるものです。お布団民族は、そんな、本人にはどうしようもない辛いことでも、お布団のせいにしてはいけない、それはお前の気構えが悪いからなのだ、何を勝手にむしゃくしゃしているのだ、ほれ、八つ当たりしていないでさっさと自分で機嫌を直しなさい、と、かような無理難題を押しつけたがる民族です。しかしあなたがお考えの通り、そもそもの原因を正さずに、機嫌だけを直そうとするのは間違っています。機嫌とは自らの意志で傾けたり正したりできるものではないのです。そもそもの原因を朝、起きだす側という根本的な問題に求め、ちっぽけな人間の自力ではなく、おおいなる存在の力に頼ることこそ、正しい道です。
あなたのお考えは、そこまでは大変に正しい、立派なものです。また、お布団に戻り、起き直しをすることができるはずというお考えもよろしい。お布団民族として暮しながら、その境地に自ら至ったこと誠にあっぱれです。
しかし、あなたのお考えの中に、どこか、小細工めいた匂いが漂うこと、これはいささか嘆かわしいことと言わざるをえません。
よろしいですか。
問題は、お布団のどちら側から起きたかなのです。それだけなのです。眠っている状態を形だけ再現したりなどして、間違った側から起きたことをなかったことにしようと胡麻化す必要などみじんもございません。
堂々と布団に戻り、ただ純粋に、正しい側から起き直してください。そのとき、全てを多いなる力にゆだねることが肝要です。自ら機嫌を直そうだとか、朝起きてからそれまでにやっちまった失敗がなかったことになりますようにだとか、余計なことを考えてはなりません。
無です。
必要なのは、ただ、無です。
無のこころで布団に再度横たわった時、そもそも睡眠不足だったあなたが、果てしれぬ眠りの底へと引きずり込まれてしまったからと言って、それはあなたの所為ではありません。どうか安らかな寝起きを迎えられますよう、お祈り申し上げます。
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by atohchie | 2003-04-01 01:59 | 缶詰製作中(書斎より)


阿藤智恵の「気分は缶詰」日記/劇作家・演出家・翻訳家(執筆中は自主的に「缶詰」になります)=阿藤智恵の日記です。


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