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永遠の教え 【だるまちゃんとてんぐちゃん】

さて水曜日は本の話。

今日、お話する本は、私が大人になってからあらためて自分で購入した大切な本です。
今、「珍しく」大人になってから再購入した本、と書こうとしてわが本棚を眺めるに、子どもの本はあれこれあっても、皆大人になってから出会った本であって、子どもの頃愛読していたのを、大人になって改めて購入したのは、これ一冊きりであることがわかりました。
なぜ買ったかといえば、手元に置き、座右の書と言うか、人生の指標というか、バイブルというか、に、しようと思ったからです。



小さいだるまちゃんと小さいてんぐちゃんは仲良しなのです。
素敵な羽団扇を片手に、頭に黒い小さな帽子をつけ、一本歯の高下駄を履き、長くて赤い鼻をしているてんぐちゃんが、だるまちゃんはとってもうらやましくなってしまうんです。
それで、家に帰ると、「てんぐちゃんの ような うちわが ほしいよう」「ぼうしが ほしいよう」「はきものが ほしいよう」とねだるんです。
だるまどんはそのたびに家中を探して、うちわや、ぼうしや、はきものをかきあつめてくれます。本には「だるまどんは」と書いてあるけど、実際は家族総出です。みんなニコニコしています。
せっかく本が手元にあるから数えてみましょう。
うちわは18か19、ぼうしは、38、靴は、36、はなは、20。
これほど集めて並べてくれても、だるまちゃんは「こんなじゃないんだけどな」とへの字口、最後のおはなにいたっては泣きそうに怒って、「ちがうよ、ちがうよ」と言うんです。

だるまちゃんのなんとわがままなこと!
だいたい、お友だちと遊んで家に帰ってきて、「●●ちゃんみたいな△△がほしいよぅ」なぁんて。それをなんども繰り返すなんて。そんなことしたら怒られるよー。それを家じゅうの人がいろいろ苦労して探してくれたのにニコリともせず、お礼も言わず、庭の植木の葉っぱを切ったり、支度中のお膳から汁椀をねだったり、妹のおままごと道具を取り上げたり、最後にはかんしゃくおこして「まるでちがうよ」とはなんたる言い草。
さすがのだるまどんも「いい加減にしなさい!」とか、「だったら、最初から言えよ!」とか、激怒するかと思いきや!「ごめん ごめん。これは おおまちがいの とんちんかん」と、「あたまを かきました」。
それでもって、また家じゅうのだるまたちが集まって、餅つきをして、だるまちゃんに、素敵なお鼻を作ってくれるんです。

私ねえ、これ読むと、涙が出ちゃうんですよ。
誰も怒らないのよ。

なんてすてき。

だるまちゃんはわがままなんじゃなかったのね。

それでまた、てんぐちゃんがかわいいんです。
葉っぱの団扇も、汁椀の帽子も、おもちゃのまないたの下駄も、「いいものをみつけたね」と一緒に喜んでくれて、だるまちゃんの鼻にも、にこにこして「だるまちゃんの はなは いちばん いいはなだね」って言ってくれるんです。
だるまちゃんは、てんぐちゃんのものを羨ましがってばかりいるのに、てんぐちゃんは「けっ、なんだよ、そんなの、妹のままごと道具だろ」とかも「俺の真似したくせにずるいぞ、その鼻よこせ」とかも言わないで、にこにこ、一緒に喜んでくれるの。

パラダイス。

本当は、この本は、そんなひねくれた読み方をしないで、ずらり並んだいろんなものを指差して、「こんなところにサンタの帽子が」とか「わたしと同じ赤い長靴だね」とか、言って、遊ぶんです。
それはわかっています。私もさっき、靴やら帽子やら数えて、楽しかった。

でも、私にとってはこれは、深い教えの本なんだな。
「無償の愛とは何か」ということについての。
それから、「生きる喜びとは何か」ということについての。
おわかりいただだける方、あるかしら。
by atohchie | 2010-10-13 10:36 | 水曜日は本の話


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